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結論としては大丈夫ですが、注意が必要です。
少量の赤いトマトを食べても、犬に悪影響が出ることは少ないです。
生のままトマトをあげても、しっかりと赤く熟しているものであれば問題ありません。
ただ、青みがあるトマトであれば、火を通していても食べさせてはいけません。
「うちのワンちゃんはトマトが好きなんです!」という飼い主さまもいて、食欲が無いときにトマトなら食べるというパターンもありました。
トマトは犬にとって必須の栄養素を揃えている訳ではないので、積極的にあげてくださいと伝えることはありません。
時にはトマトの皮を消化吸収できず、食べ過ぎれば消化不良を起こして下痢になってしまうこともあるでしょう。
トマトだけで出来ているジュースであれば、少量を飲ませても大丈夫だと考えます。
ただ、トマトそのものよりも、ジュースにすると思ったよりも多く摂取していることもあるので、加工品はあげない方が安全です。
また、間違ってトマトの色をした野菜ジュースをあげてしまうと、それは大変危険なことになります。
野菜ジュースには玉ねぎ成分やニンニク成分、塩分が添加されていることがあるからです。
基本的に、人用の加工品は犬に与えないようにしましょう。
ジャガイモの芽には毒があるというのは有名ですが、トマトにもそれと似たような毒素の「トマチン」というものが含まれています。
犬がトマチンを中毒量で食べてしまうと、吐き気、下痢、腹痛、元気消失などの症状が出ると考えられています。
しかし、トマチンは完熟したトマトにはごく微量にしか含まれていません。
おやつ程度に犬に赤いトマトをあげる分には、トマチンによって中毒になることはないでしょう。
それよりも、トマチンによって食中毒が起きるリスクが高いのが、トマトの栽培を行っているご家庭です。
トマチンが一番多く入っているのは花(1000mg/kg)、そして葉、未熟果実、完熟果実(0.4mg/kg)の順になっています。
家庭菜園でトマトの苗木があるご家庭では、犬が花や茎を誤食してしまう危険があるため気を付けなければなりません。
プチトマトの栽培が小学生の理科(生活科)で採用されている地域もあるので、否応なく家にプチトマトの苗がやってくることもあります。
犬を飼っているご家庭で、小学生がプチトマトの鉢を持って帰ってきてしまった時は、ぜひとも注意してくださいね。
トマトを構成している成分のほとんどは水分ですが、中には犬にも良いと考えられる栄養素も含まれています。
トマトと言えば、リコピンという栄養素が有名ですよね。
リコピンを多く含むトマトが品種改良で作られているほどです。
リコピンの効能は抗酸化作用です。
「犬にも抗酸化作用は大切なの?」と言われれば、「必要ではないものの体には良い」という回答になります。
生きているだけで、動物は酸化していきます。
代謝の過程で、フリーラジカルという酸化物質が細胞を傷つけており、抗酸化物質にはそれを防ぐ作用があります。
細胞が傷つかない方が体に良いのは、何となく想像がつくのではないでしょうか。
そのために、リコピンは犬にも良い作用があると言えます。
ビタミンCも抗酸化物質の大御所です。
水様性ビタミンであるビタミンCは、多く取っても尿から排泄されるため毒性もなく安全です。
ただ、犬は自分でビタミンCを作り出すことができます。
つまり、ビタミンCを人間のように摂取しなくても何ら問題はありません。
それゆえ、犬は人間ほどビタミンCを必要とはしていないものの、食べても問題はないという位置づけになります。
持病がある犬はトマトを食べても大丈夫なのでしょうか。
基本的には、少量であれば問題ないと考えます。
トマトに含まれるβカロテンは抗酸化作用を持っていて、細胞の酸化を防いでくれます。
また、体に必要なビタミンAの材料になっているので、通常であれば体に良い栄養素と言えます。
ただ、ビタミンAは脂溶性ビタミンと呼ばれるもので、簡単に体外に排出されず、肝臓に蓄積されます。
そのため、肝機能の落ちている肝臓病の時には、βカロテンの取り過ぎは心配になる方もいることでしょう。
そうとはいえ、必要のない時にはβカロテンからビタミンAの合成は低下するので、必要以上に心配することはありません。
ひとかけらのトマトで劇的に病状が悪くなる可能性は低いと考えられます。
ただ、少量でも毎食・毎日と続けるのは良くない影響が出るかもしれないので、止めておくのが賢明です。
持病として尿路結石症を持っている犬の場合にも、少量のトマトで石ができやすくなるかと言えば、水分が主成分ということもあり大きな問題にはならないと考えられます。
しかし、トマトにもカルシウムは含まれるので、連日でトマトを食べるのはおすすめできません。
一般的に尿石症と呼ばれるストルバイト結晶や、シュウ酸カルシウム結晶が尿中に出てしまう体質の犬の場合は、体に入るタンパク質やミネラルのバランスを丁度良く配分する必要があります。
もしオヤツや野菜、果物をあげると、その絶妙なバランスを整えている治療食の効果が激減してしまいます。
病院で処方されている治療食は、お薬と同じくらいの効果を持っていて、一般食と比べるとビックリするほど高価です。
せっかく高いご飯をあげているのに、その効果をナシにしてしまうのはもったいないので、治療食を食べている場合は、一口のトマトでも止めておくのが良いでしょう。
トマトは糖分が多く、減量中の犬にはおすすめできません。
あまり甘くないトマトであれば、目くじらを立てる必要もありませんが、体の小さな動物にとっては、一口で大きな影響が出てしまうこともあります。
もし毎食甘いトマトを食べていると、犬にとってそれは結構な糖分の摂取になっているかもしれませんので控えるようにしてください。
犬にトマトを上げると良いのか?と言われれば、獣医療的にはあまりメリットは無いと言えます。
本人がとても喜んでいて、ご褒美として最適ということであれば、特別な日にひとかけら程度あげるのは良いでしょう。
例えば、動物病院で混合ワクチンの注射を打つ時に、トマトに夢中で注射に気づかないという犬であれば、それはメリットが大きいと言えます。
栄養面からトマトが必要だったり、犬の健康面にトマトが効果的ということはあまりありません。
猫はほぼ甘味を感じないので、トマトが大好きという子は耳にしません。
ただ、犬は甘味を感じるため、トマトが大好きという子がいます。
中には、腎不全で食欲が無くても、トマトはよく食べるというワンちゃんもいました。
カリウムも低下しがちで、高齢で腎不全とずっと戦ってきたという子には、最期の時期にあえて好物を制限せずに、下痢や吐き気が出ないなら食べても良いよと伝えることがあります。
それぐらい、トマトはワンちゃんにとって魅力的な食べ物と認識しています。
皆さんの愛犬は、トマトが好きでしょうか。
本記事で取り上げた項目を踏まえつつ、トマトの扱いには注意を払って頂ければと思います。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/03/11
公開日 : 2022/03/11