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猫は真正の肉食動物だと言われています。
つまり、野菜や果物から栄養を得る必要のない動物です。
雑食傾向のある犬と比較しても、猫の必要とするタンパク質や脂肪の量が多いことがわかっています。
そのため、猫は食事にタンパク質と動物性脂肪の含有量が多いものを選ぶ傾向があります。
栄養価的には本来猫に接種させる必要はないみかんなどの果物ですが、飼い主が食べているみかんに興味を持つ猫がいることは考えられます。
まず、人にとってのみかんの魅力は主に酸味と甘味でしょう。
特に人の好みに合わせて、甘味が強化されたみかんが多く販売されています。
この甘味と酸味について、猫はどのように感じているのでしょうか?
猫の味覚は、うま味、塩味、酸味、苦味を感じることができます。
そして、知らない方も多いのですが、甘味を感じることができないようなのです。
難しい話をすると、甘味を感じる受容体(甘いものがくっつくところ)の遺伝子が偽遺伝子となっており、応答が不可能と判断されています。
「え!?うちの猫は甘いものを喜んで食べるわ!」と言う飼い主様も多いのですが、それも多くは脂肪成分が好きで食べているようです。
逆に、苦味を感じる受容体は多く存在し、体にとっての毒物を判断するのに役立っているようです。
酸味の受容体も同様で、野生での生活において、酸味を持っている食べものは腐敗している可能性を多く含むために、食中毒を回避するには酸味をしっかりと感じ取ることが大切なのです。
そのため、基本的に猫は酸っぱいものや苦いものは嫌いで、甘いものも特に好きな訳ではなく、動物性のタンパク質の風味や動物性の脂肪分の味を好みます。
人よりも嗅覚の優れている猫なので、人が感じ取れる匂いは強烈な刺激臭として捉えられているかもしれません。
基本的に、猫は刺激のある匂いが嫌いです。
消毒薬の匂い、知らない動物の臭い、人工的な匂い、そして各種ハーブやリモネンの香りも苦手とされています。
鼻粘膜に刺激の強い匂いは、猫にとって毒性(有害なもの)のあることが多いためです。
逆に、嗅ぎ慣れた匂いには安心感を持ちます。
飼い主様の匂い、自分の体から出る匂い、猫のフェイシャルフェロモンなどが猫の好きな匂いです。
これらは人には感じ取れないほどの僅かな匂いでしかありません。
また、動物性タンパク質の香り(かつお節や調理したお肉など)や動物性脂肪(バター、生クリーム、ツナなど)が大好きです。
食欲不振の時には、風味付けとして利用している飼い主様も多いのではないでしょうか。
猫の好きな味が動物性タンパクや脂肪のうま味であることが多く、甘味を感じないこと、酸味は危険な食べもののサインであることから、みかんの味を好んで食べる猫は少ないでしょう。
また、猫の嗜好性を大きく左右する匂いについても、人にとっての酸っぱい香りや爽やかな香りは、猫にとって中毒物質の香りであることが多いため、やはりみかんの匂いも好きではないはずです。
それでも、みかんをあげると喜んで食べるという猫もいます。
これは味や風味、匂いが好きなのではなくて、飼い主様との交流、あるいは食べた感触を楽しんでいると考えられます。
コタツにみかんがあれば、大概の冬は快適に過ごせる気がします。
手のひらが黄色くなるほど冬にみかんを食べてしまう人も多いのではないでしょうか。
ここでは、みかんにはどのような健康に良い栄養素があるのかを解説します。
みかんと言えばビタミンCが豊富という印象の方も多いでしょう。
抗酸化作用があるビタミンCは、免疫力を高めたり、動脈硬化を防いだりと、健康に良い働きが沢山あります。
人間は、体内でビタミンCを合成する(作る)ことが出来ないので、食べ物から得る必要があります。
必須ビタミンとして殊更にビタミンCを強調して表示してある食品も多いですよね。
しかし、猫はビタミンCを体内で合成する(作る)ことができます。
そのため、実は猫は人のようにはビタミンCを食物から摂取しなければならないということはありません。
ベータカロテンとも言われます。
みかんに含まれる黄色の色素で、人ではビタミンAを合成する素(もと)です。
これ自体にも抗酸化作用があり、酸化による老化を防止するなど健康に良い働きを持っています。
ビタミンAは人の必須の脂溶性ビタミンであり、体の機能を正常に保つために必要な栄養素です。
ところが、猫はβカロテンをビタミンAに変換する酵素を持っていません。
そのため、ビタミンAの補充という意味ではβカロテンを必要とはしていません。
人と猫では代謝の仕方や必要な栄養も違う所が多いので、必ずしも人と同じように体に良いということは無いのです。
ヘスペリジンはみかんの甘皮に含まれる栄養素で、最近ではビタミンPとも言われており、強力な抗酸化作用を持っています。
人では高血圧や高脂血症に効果があるようですが、猫でその効果は評価されていません。
それでも、いくつかの犬猫用のサプリメントや歯磨き粉に、ヘスペリジンを含むものが販売されています。
サプリメントに入っているということは、猫への毒性はなく、良い効果(抗酸化作用、血管や神経を守る作用)が期待されているということです。
ヘスペリジンを摂らせたい場合には、以下で解説しているような中毒のリスクがある甘皮を食べさせるより、サプリメントを利用する方が安全でしょう。
シトラスオイル中毒という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
植物由来のシトラスオイルは、天然成分なので体に悪い印象がない方が多いのですが、このオイルの中にはリモネンやリナロールという猫にとっての中毒物質が含まれています。
リモネンやリナロールは、柑橘系の果実の皮に多く含まれる成分です。
人にとっては心地良いさわやかな香りなのでリラックス効果があり、芳香剤やアロマオイル、シャンプー剤に使用されています。
また、動物用であっても虫よけに入っていることがあるため要注意です。
リモネンやリナロールの中毒症状は以下の通りです。
さらに重症なケースでは、以下の症状も見られます。
ここまで重症になることは少ないですが、みかん(などの柑橘系の皮)に危険性があることは飼い主として知っておきましょう。
上記でも述べた通り、シトラスオイル(柑橘系の香)は猫にとって中毒症状を起こします。
匂いを感じるという現象は、小さな空気中の粒子が鼻の粘膜にくっついて神経を刺激することによって起きます。
例え香りだけとはいえ、体にその成分が入っていることは間違いありません。
人や犬よりもシトラスオイルに感受性の高い(毒性が出やすい)猫なので、たとえ香りだけでも周囲に置くのはやめましょう。
シトラスオイル(柑橘系の成分)の入ったシャンプーが猫の皮膚に触れると、その部分から吸収されて中毒症状を出すことがあります。
また、猫が匂いを落とそうと被毛を舐めることによって、口からもリモネンやリナロールが体内に入ってしまいます。
皮膚に付いたリモネンは、たった10分で血液中の濃度が最高値になります。
それだけ吸収が早いものだと知っておきましょう。
もし柑橘系の匂い成分が入ったシャンプーや洗剤が猫の体についてしまった場合には、すぐに中性洗剤(もちろん柑橘系の香りのないもの)で洗い落します。
すぐに対処できれば大きな問題にならないことが多いですが、皮膚がただれていたり、入院が必要なほど重症になることがあります。
みかん箱にはミカンの匂いが付いていると考えられるので、みかん箱は猫に嫌われる可能性があります。
ここでは、みかん箱は避けて、段ボールで猫ハウスを作るとどんな良いことがあるのかを解説します。
猫は、新しいものを嫌がる性質と、新しいものに興味を持つ(好む)性質とを併せ持った動物です。
イギリスのことわざ「好奇心は猫を殺す」という言葉もあるように、猫は好奇心が強く、何でも見てみたい、近付いてみたい、やってみたいというような性質があり、犬よりも静かに「やらなければ良いのに…」というような事をやってしまう動物です。
そんな猫の本能を刺激して満たせるのが段ボールハウスです。
中に入ってくつろぐも良し、飼い主様との遊びをグレードアップさせるも良しという素敵な一品を作りましょう。
作り方の手順は下記の通りです。
家の中で退屈な毎日を送っている猫に、簡単なワクワクやドキドキのプレゼントをしてみませんか?
デメリットの中で最も重要なのは、猫が段ボールを食べてしまう可能性です。
それ以外は、人間の気持ち次第な部分が多いので、あまり気にしなくて良いでしょう。
ある程度の成猫になれば齧ることが少なくなるため、子猫時代は食べてしまっていても数年後には食べないことが多いです。
その時は、再度段ボールハウスに挑戦してみてください。
みかんの皮に含まれる成分が、ここまで酷い中毒症状を起こすことは、あまり知られていない事実のように感じます。
まだ学生だった頃に、飼い猫がみかんの皮の匂いを嗅ぎにきたので、悪戯心で皮をギュッと押して猫がビックリして飛んでいったのを覚えています。
あれはやってはいけないことだった、虐待まがいだったと知ったのは、随分と後になってからのことでした。
猫と人は、長く共に暮らしてきた歴史があるだけに、人と近しい存在のように感じてしまいます。
しかし、生き物として全く別で、必要な栄養や毒物を人の常識で判断してはいけないということを忘れてはいけません。
みかんの果肉を少量あげても大きな問題にならないことが多いですが、気軽にシトラスの香りの人用のシャンプーで洗うことで、愛猫を重症に追いやってしまうことがあります。
知らなかったという言葉は命を預かる人間にとっては禁物です。
愛猫の健やかな生活のために、正しい知識を持っておきましょう。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2021/11/04
公開日 : 2021/10/27