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猫にもA型とB型、そしてAB型があります。
ただし、人のABO式の血液型とは全く異なり、猫のA型はB型よりも優勢遺伝します。
そのためA型の猫が多く(60〜90%)、B型は少なく(10〜40%)なります。
また、難しい話ですが、AB型はAB型として第三の対立遺伝子として存在し、AB型同士の両親、あるいはAB型とB型の両親からのみ生まれることになります。
AB型はごく僅かで、全体の1%以下です。
人のようなO型は存在しません。
猫の血液型は人よりも偏りが大きいため、これで性格分類が出来ないのはお分かりかと思います。
もし血液型で性格に変化がでるのであれば、A型である大半の猫が同じ性格ということになってしまいます。
日本猫の大半が同じ性格ということはありません。
猫の性格を決めるのは親の気質と生活環境です。
そして、品種によってもある程度の傾向はあります。
例えば、大人しいと言えばラグドール、やんちゃと言えばボンベイ、三毛猫は我慢の限界が来ると激怒するなどです。
ただ、品種による性格傾向も決定的ではなく、同じアメリカンショートヘアでも、全く怒らない猫もいれば、常に怒っている猫もいます。
その他、家では大人しくとも、診察中に性格が豹変する猫もしばしば見られます。
猫の品種によってA型・B型・AB型の比率が異なります。
大体の日本猫はA型です。
また、アメリカンショートヘアはほぼA型と言われています。
通常よりはB型が多い(25%前後)とされているのが、ブリティッシュショートヘア、デボンレックスです。
人気猫種のアビシニアン、ソマリ、ペルシャ、ヒマラヤン、スコティッシュフォールドも通常よりもB型比率が高い(10〜25%)ようですが、日本で近年見られるデータはありません。
猫の血液型についてはまだ解明されていないことも多く、AB式以外にもMik抗原の有無や、FEA抗原というものも提唱されており、人のRh抗原のようにいくつもの血液型が存在していると考えられます。
血液型とは少し異なりますが、アビシニアンとソマリは赤血球が溶血しやすい遺伝子(ピルビン酸キナーゼ欠損症)の保有の割合が高い(40%前後)と報告されているので注意が必要です。
ちなみに、犬の血液型はDEA1.1(+)DEA1.1(−)が最も有名な分け方です。
つまり、ドッグ・エリスロサイト・アンチゲン(犬赤血球抗原)の1.1が有るか、無いかが大きな区別です。
このDEAですが、なんと1~13まであります。
そして、DEA1だけは更に1.1・1.2・1.3の3つに分類されます。
このうち強い拒絶反応を示すのがDEA1.1のため、その有無がとても重要視されています。
その他にも、DalやKaiという血液型も見つかっていますが、簡単には検査できないため一般には判定されていません。
AB式の血液型については、簡易検査キットが発売されているので、動物病院が取り扱っていればすぐに調べてもらえます。
検査キットが無い動物病院でも、検査会社に測定依頼を出せば、3〜7日で血液型を知ることができます。
ただ、猫の性格によっては採血をすることで過剰にストレスがかかるかもしれません。
検査に用いる血液量はとても少ないのですが、採血という行為が猫にはストレスがかかります。
健康診断や手術前検査での採血時に、血液型も一緒に検査してもらえると猫への負担を軽減できるでしょう。
血液型が重要になってくるのは、人と同様に出産時と輸血時です。
出産したB型の母猫がA型の子猫に初乳を飲ませると、「新生児溶血」を起こし、子猫が死んでしまうことがあります。
これはB型の母猫の初乳に、A型の赤血球を激しく攻撃する抗体(A抗体)が含まれているためです。
A抗体が初乳から体内に入ってくると、子猫の中のA型赤血球がどんどん壊されていってしまいます。
新生児溶血は、起きてしまうと治療法なく突然死してしまうケースもあり、出産をする場合は父猫と母猫の血液型はしっかりと把握しておく必要があります。
次に血液型が重要になるのは、輸血の時です。
猫も血液中の赤血球の割合が20%を下回ると、命の危険性が出てきます。
赤血球が足りなくなって生命維持が難しいと判断されると、獣医師は輸血を提案します。
この時、自分の愛猫の血液型を知っていれば、輸血のリスクを判断する大切な情報となります。
輸血の基本は、A型にはA型を輸血、B型にはB型の血液を輸血するのが理想です。
なぜなら、A型の血液中にはB抗体が存在するため、B型の赤血球を攻撃し、B型の血液中にはA抗体が存在するため、A型の赤血球を攻撃するリスクがあるからです。
このため、型の合わない輸血では、強い拒絶反応が出てしまう可能性があります。
特にB型の血液に含まれるA抗体はとても強力なため、B型の猫にA型を輸血すると激しい拒絶反応が生じます。
AB型にはA抗体もB抗体も存在しないため、輸血用の血液としては理想的と言えますが、輸血される時には注意が必要です。
もし飼い猫がB型であった場合、同じB型を探すのはA型よりも難航します。
B型の供血猫をもっている動物病院は少ないため、輸血のリスクは高いということを理解しておきましょう。
猫の血液型がAB式だけでなく、他にも拒絶反応を起こすような抗原抗体が存在することがわかっているので、たとえAB式の血液型で適合していても、輸血の前には必ず交差適合試験(クロスマッチ)という検査を行います。
血液を混ぜた時に、どのような反応が出るのかを輸血前に把握しておく検査です。
これには主試験と副試験の2つの結果があり、その両方が適合になるのが理想です。
しかし、このクロスマッチで主試験と副試験の両方が適合していなくても、抗アレルギー剤や、輸血の速度、輸血中のモニタリングを綿密に行うことで、輸血を実施するケースがあります。
その場合は副反応(拒絶反応)のリスクが高くなっているので、獣医師からしっかりと説明を受けるようにしましょう。
8歳以上の猫は徐々に腎機能が低下し、その75%が失われてくると多飲多尿、脱水、食欲不振や吐き気、体重減少などの症状が表れます。
さらに腎機能が失われると、血液を作るために重要なエリスロポエチンという腎臓から出るホルモンが減少し、気づいた時には重篤な貧血に陥っているケースも多く見られます。
この時、輸血を提案されることがあるのです。
愛猫がA型なのか、B型なのか、はたまた希少と言われるAB型なのかを知っておけば、輸血のリスクの高さも把握し、高齢期の貧血に対して準備することが出来ます。
B型やAB型であった場合には安易に輸血が出来ないことが多いので、貧血傾向に対しては、エリスロポエチンの補充や鉄や葉酸のサプリメントの使用を考慮しておきましょう。
猫の血液型はまだまだ解明されていない部分が多く、その比率ですら近年の正確なデータがありません。
人気品種のスコティッシュフォールドやマンチカンが、日本において何型が多いのか分かっていないので、自分の愛猫だけでも血液型を把握しておくのは大事なことです。
人でも、自分の血液型が分かっていないのは何か不安な気持ちにならないでしょうか。
ぜひ飼い猫の血液型を把握しておき、もし気軽に輸血が出来ないB型やAB型であった場合には、高齢期には検診を欠かさずに行い、貧血にならないように気を付けることが大切です。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2021/08/05
公開日 : 2021/08/05