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子猫の正常な排便回数は、1日に1〜3回ほどです。
成長するにしたがって、だいたいの猫は毎日1回の排便になります。
体質によっては2日に1回という猫もいます。
それでは、どこからが便秘なのでしょうか?
目安としては、今まで出ていた回数よりも顕著に排便回数が減ってしまった場合には便秘です。
また、排便はあるものの、少ない量しか出ずに、お腹に便が多く残っている場合も便秘と言えるでしょう。
お腹の中の便の量は、レントゲン撮影をしなければ客観的に評価することはできません。
それでも、いつもよりお腹がポッコリしてきているといった状態も大切な指標となるので、いつも子猫のお腹の張りは注意して見ておくようにしましょう。
哺乳期(ミルクしか飲んでいない)の子猫は、まだ自分で排便をコントロールできないために、母猫がお尻を舐めて排泄を促してあげます。
保護猫の場合は、この時期(生後3週齢より前)に人の手で育てるケースもあり、便秘になりやすい傾向にあります。
まだミルクしか飲んでいないにも関わらず、排便回数と排便量が少ない、お腹がどんどん張ってくるという子猫は便秘です。
その原因には下記があります。
保護された子猫の場合、母猫のおっぱいから人工哺乳に切り替えるので、どうしても十分な量を哺乳できていないことがあります。
必要量が取れないために、排便量も少なくなり、便秘になってしまうのです。
対策としては、ミルクの温度をしっかりと人肌にする、乳首の切れ込みの大きさを変えてみる、子猫ミルクの種類を変更してみる、飲ませるときに薄暗くしてみるなどがおすすめです。
本来は母猫が子猫のお尻を舐めて排泄を促すのを、人が代わりにしてあげる必要があります。
通常は、哺乳前と哺乳後に濡れたティッシュやコットンでトントンとしてあげると、ジワっと出てきます。
それでも出ない時には、体勢を伏せにしてトントンしてみる、ゴワゴワしたタオルでトントンしてみるのがおすすめです。
強く擦ると皮膚を傷めるので、優しくすることを心がけてください。
強さや回数、トントンのやり方のポイントは、「母猫の舌のように」を意識することです。
どれだけ哺乳しても、トントンと排泄を促しても、お腹に寄生虫が存在する場合には排便できない(消化管がつまりがちな)ことがあります。
この場合、どれだけ対策をとっても便がうまく出てきません。
お腹が変に張って飲ませても排泄が見られない、食欲が減ってくるという場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
また、排泄に問題が無くても(下痢や便秘もなくても)、消化管内寄生虫に感染している場合があります。
特に保護猫には寄生虫がいる場合が多いので、必ず動物病院で検便をしてもらってください。
これまでミルクの栄養補給だけだった子猫が、徐々にキャットフードを食べるようになるのが離乳期です。
離乳期は、その子猫の栄養状態によって開始時期が異なります。
目安は、哺乳用の乳首を噛む、歯が生えてくる時です。
食餌中の水分量が、哺乳期に比べて減少してしまうことが多いため、便秘になることがよくある時期と言えます。
一番の原因は水分摂取量の減少です。
また、ミルクからキャットフードに変更することにより、腸内細菌が変化することも大きな要因と言われています。
対策としては、離乳を焦らずにゆっくりと進める、ドライフードだけでなく子猫用の缶詰(ウエットフード)も利用してみる、乳酸菌の入っているキャットフードを選ぶことがおすすめです。
逆に下痢になる子猫も多いため、便の回数と固さは常に注意しておいてください。
なお、この時期でも寄生虫によって便秘になる子猫もいます。
ミルクを足さなくてもキャットフードから栄養を取れるこの時期は、自分で飲水するようになるため、便秘になることは少なくなります。
また、活動性も多くなり、元気に遊び、よく寝て、よく食べている子猫は、本来は安定した排泄をするようになります。
この時期は、里親に出されたり、あるいはペットショップから購入されて家にくることが多いので、環境の変化によって便秘になってしまうことが多いです。
猫は決まった場所で排便する習性があるため、環境が変化すると安心して排泄ができないのです。
また、トイレがいつもと違う匂いがする、砂が違う、場所が違う、形が違うなど、戸惑いが大きいと排便を我慢してしまう子猫もいます。
対策としては、子猫の排泄物の匂いのついたものをトイレに入れておく、トイレを1匹につき2つ用意する、排泄時にジロジロ見ないなどが良いでしょう。
そして、この時期に一番可能性が高まっているのが、異物の誤食による便秘です。
若い猫の便が出ない、食欲が落ちている、吐き気があるという場合には、異物(オモチャのかけら、紐、ジョイントマットの端など)を食べてしまっていないかが疑われます。
もし食べてしまっていると、消化できない異物が消化管に詰まっていることがあります。
こうなると排便が出来ず、全身麻酔をかけて外科手術(お腹を切る)で異物を消化管内から取り出すという事態になります。
大きな負担が子猫にかかる異物の誤食には、十分に注意してください。
子猫のうんちが確認できない時、何日くらいで受診したら良いのでしょうか?
一般的には、丸2日にわたって排便が少しもなければ、まずは受診してみることをおすすめします。
また、うんちが出ない、食欲もない、吐き気が出ているという場合にはすぐに受診が必要です。
便秘の原因を獣医師と共に推測し、対処と治療を実施していく必要があります。
体が小さいため、体調が悪くなる前の受診を心がけてください。
まずは治療が必要な便秘なのか、問診と身体検査をして判断します。
全身状態を確認して、必要であればお尻を刺激したり、お腹を動かすお薬を処方したり、食生活の見直しを指導します。
病的なものであれば、その原因に対する治療を行います。
子猫の時期では、病気のサインとして便秘になるものはごく僅かです。
その中で最も多いのは、上記にも挙げた寄生虫症での便秘です。
ごく稀なケースでは、生まれつき臍(さい)ヘルニアや鼠径(そけい)ヘルニアがあり、そのヘルニア孔に消化管が入ってしまい、食べ物が通過できなくなるというものです。
この場合には排便が無く、元気や食欲も無い、緊急性のある状況になります。
基本的に子猫の便秘は、食餌や環境、生活などによって生じるものがほとんど。
そのため、まずは生活環境をしっかりと見直すことが大切です。
子猫用のフードをしっかりとした量を食べ、お水を飲み、遊び、よく寝ている子猫は、便秘になりにくいです。
まず子猫用のフードには、ドライフード、缶詰、パウチ、ペーストなど様々なタイプのものがあります。
「一般食」と表示されているものは、オヤツにあたるので主食にしてはいけません。
「総合栄養食」と表示され、子猫用(推奨月齢も記載されているもの)のものを主食にしてください。
便秘がちの子猫には、水分含有量の多い缶詰やパウチ、ペーストのものをドライフードに混ぜてみるのがおすすめです。
あげすぎると下痢になってしまうことがあるので、必ずティースプーン1杯から与えます。
子猫の時期に色々な形状や味、素材を経験させるのは大切なことです。
排便の状態を見ながら、母猫のように子猫に沢山の食の経験をさせてあげましょう。
便秘予防に飲水は欠かせませんが、子猫に無理に水を飲ませることはできません。
しかし、飲みたくなるような環境を作ってあげることはできます。
匂いの強いもの(ご飯やトイレ)の近くに置かれた水は、猫にとって腐った水と勘違いされることがあるため、必ず猫の飲み水とご飯皿は30cm以上の距離をとるようにしましょう。
子猫の遊びとは、狩猟本能を満足させるということに他なりません。
狩猟本能は、本来は食餌と直結しているため、遊びながら食べる、探し出して食べるという工夫をしてあげることが大切です。
ボールやベットボトルにドライフードを入れ、コロコロと子猫が転がすとフードがポロポロと出てくるという遊びがおすすめです。
また、部屋の数か所にご飯少量を隠しておいて、子猫が部屋を探索しながらご飯を見つけるゲームも、子猫の探索本能を刺激して満足させることに役立ちます。
もちろん、飼い主さんが猫じゃらしや猫用玩具で遊んであげることも大切です。
ただ、やりすぎると興奮から噛むこともあるので、興奮のさせずぎには注意してください。
遊びとともに、子猫の大切な仕事が睡眠です。
睡眠がしっかりと取れていないと、排便にも影響が出るのは人と同様です。
猫は夜行性のため、活動時間は夜間。
つまり、昼間は殆ど寝ているのが正しい生活リズムです。
人の生活に合わせ過ぎて、昼間に子猫の睡眠を邪魔するのは止めましょう。
少し薄暗い、人の視線を遮るものがある方が、よく寝られます。
子猫が家に来てから数日のうちに便秘で悩むケースが多いです。
家に慣れて、元気に食べているうちに、便秘は解消されることがほとんど。
子猫のうちは食生活と寄生虫、そして異物の誤食に気を付けていれば、便秘が大きな問題になることは少ないです。
特に保護猫の場合は、便秘や下痢でなくても、早めに動物病院で検便を実施してもらってください。
良いウンチをしていても、回虫や条虫などの消化管内寄生虫に感染していることがあります。
また、それらは人にも感染するため、家に子猫が来てから直ぐに実施することをおすすめします。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2021/07/19
公開日 : 2021/07/16