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中毒症状を起こさないなら、キウイをたくさん与えても問題ない?
猫にマタタビを与えると酔っ払ったような反応を起こすことは、知っている方も多いと思います。
実は キウイ は、マタタビの仲間。
マタタビ科マタタビ属 の植物なのです。
そのため、 キウイに対してマタタビに似た反応を起こす 猫がいます。
ただ、実際に与えてみた動画の反応を見てみても、実ではなく枝などの方が猫の反応は良いようです。
また、キウイ農家では“ネコ害”も起きているようです。
キウイの成分によって惹きつけられた猫たちがキウイの木にいたずらしてしまったり、根っこを掘り起こすなどの行動をとることがあります。
キウイの1〜2年ほどの若木では猫に体を擦り付けられると、倒れてしまったり、木をかじったりと被害が起こるとのことです。
園芸の情報でも、キウイを地植えにする際は猫の対策をとることがおすすめされています。
しかし、現在の品種改良されているキウイに対しては猫の反応も鈍くなっているようです。
ただし、マタタビでも猫の反応にはかなり個体差がありますので、キウイに関しても同じことが言えるでしょう。
それでは、キウイと同じマタタビ科のマタタビに、猫はどうして反応するのでしょうか?
猫がマタタビを見つけると、舐める、噛む、顔をこすりつける、地面にゴロゴロと転がるなど、「マタタビ反応」を引き起こすことがあります。
猫のマタタビに対する反応については、60年以上前の研究から、マタタビラクトン類と呼ばれる複数の化学成分が引き起こしていると報告されていました。
しかし、マタタビラクトン類のどの物質が強くマタタビ反応を起こすのか、またマタタビ反応にどんな意味があるのかということに関しては謎に包まれていました。
そんなマタタビに関して、2021年1月21日に新たな研究報告が発表されました。
その研究によって、マタタビに含まれるネペタラクトールという物質が、猫に強くマタタビ反応を引き起こす重要な活性物質だということが明らかになりました。
同時に、マタタビ反応中のネコの脳内状態を調べたところ、βエンドルフィンの血中濃度が上昇していることがわかったのです。
このβエンドルフィンはμオピオイド受容体を活性化し、脳内にドーパミンを放出させます。
そのため、マタタビに含まれるネペタラクトールによって、多幸感に関係している神経系のμオピオイド系の活性が起こることが明らかになりました。
また、この実験でネペタラクトールという成分に蚊の忌避効果があることもわかりました。
猫はマタタビ反応で体にネペタラクトールをこすりつけることによって、蚊から身を守り寄生虫の感染防御などに役立てていると思われます。
キウイもマタタビの仲間なので、このような機序で猫はマタタビ反応を起こしている可能性があると考えられます。
キウイには、私達人間にとって体に良い成分をたくさん含んだ果物です。
ビタミンCやE、食物繊維やポリフェノールなど、たくさんの栄養素が含まれています。
しかし、猫は私達と異なり肉食動物です。
そのため、猫に中毒を起こす植物はこの世にたくさん存在しています。
特にユリは強い毒性で、花粉を少しなめただけで死んでしまうこともあるのです。
そんな植物に弱いイメージのある猫ですが、マタタビの仲間であるキウイはどうでしょう。
安全に食べることはできるのでしょうか。
猫がキウイの実、根、枝、葉などを食べたり、かじったりすることに大きな問題はないとされています。
ただし、猫は肉食動物なので大量に与えることはおすすめできません。
本来必要な栄養素を、十分に摂取できなくなる可能性があるからです。
キウイを食べなくても猫の健康は維持できますし、キウイの味を好む猫も多くないとは思いますので、いくら栄養が豊富だからといって無理に食べさせる必要はありません。
先述した通り、猫にキウイをたくさん与えることはおすすめできません。
たくさん食べることで下痢や嘔吐などの消化器症状を起こしたり、体質に合わない猫の場合は健康被害を起こす可能性も否定できません。
キウイにはカリウムも豊富に含まれているため、カリウムのアンバランスを起こしやすい持病(心臓病や腎臓病)がある猫ではおすすめできません。
猫でよく見られる疾患のひとつに、尿路結石や膀胱結石があります。
中でもシュウ酸カルシウム結石は内科的に溶かすことが出来ず、基本的には外科手術による治療が第一選択となります。
キウイにはシュウ酸カルシウムがたくさん含まれています。
通常シュウ酸カルシウムは消化管の中でカルシウムと結合して便から排出されますが、大量に存在していると体内に吸収されて結石の原因にもなり得ます。
もし猫がキウイを欲しがるようであれば、少量与えてみて体調に異変がないかしっかりと確認するようにしましょう。
そして、猫がキウイを大好きだとしても与えすぎには要注意です。
また、枝や葉など実以外の部分を与えるときは、猫がかじって摂取してしまう可能性もあるので、農薬の使用有無にも気を付けて与えましょう。
キウイがマタタビ科だったという事実に、驚かれた方も多いのではないでしょうか。
キウイによって起こるマタタビ反応は、猫にとってストレス解消効果があるとも言われています。
最近の研究で判明した作用神経系からも、これらの反応中に猫が幸せや快感を感じていることが示唆されます。
また、マタタビは成猫の方が子猫よりも効果が強くでるともいわれています。
適正な範囲で上手に使用して、愛猫にもストレスを発散させてあげましょう。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2021/03/08
公開日 : 2021/03/08