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猫の平均的な体温は、人間とは少し異なります。
また、 ライフステージでも平熱は違う ため注意が必要です。
子猫は生まれてから30分ほどすると、母猫の体温から自身の体温に低下していきます。
その後は母猫に寄り添うことで、体温低下を防ぎます。
子猫とひとくくりに言っても、生後の週齢で正常な体温は変わってきます。
以下は、 直腸に体温計を入れて測った直腸温 での目安です。
生後1週齢:35〜37.2度
生後2〜3週齢:36.1〜37.8度
生後4週齢〜:37.2〜38.3度
生後8週齢位からは成猫の正常体温とほぼ同じになるといわれています。
成猫の平熱は38.3〜38.8度(直腸温) の範囲です。
猫は興奮するとすぐに体温が上がるため、動物病院で測る時は体調不良でなくても、もう少し高い値(39度台前半)が出ることもあります。
最も正確に体温を評価するためには、肛門から体温計を入れて直腸の温度を測らなくてはいけないといわれています。
ただし、肛門はとてもデリケートな場所なので、嫌がってしまう猫も多いのです。
そのため、猫の性格によっては股や脇の温度を参考にしたり、耳で体温を測ることもあります。
子猫の場合は 、体温のコントロールがすぐに命に関わることもあるので、 可能な限り直腸温での体温評価 が薦められています。
基本的には 動物用の体温計の使用が望ましいので、自宅に一本あると安心 です。
このタイプは先端が柔らかく曲がるようになっているので、体温計が直腸を傷つけにくくおすすめです。
肛門に入れる時 は、そのまま入れると 痛みを起こす可能性があるので、必ず専用の潤滑ゼリーやオリーブオイルなどを使用 しましょう。
また、 清潔に使用するために専用の体温計カバーを使用 するのがおすすめです。
どうしてもお尻で嫌がってしまう猫は、 耳測定タイプの使用 も良いでしょう。
耳タイプや、股や脇で挟んでの測定では直腸温と誤差が出る可能性があるため、 動物病院で直腸温を測る時に持参して誤差を確認 しておくと目安になります。
特に股や脇の場合1度以上誤差(大抵直腸温より低い)が出ることがほとんどなので、確認しておくといいと思います。
猫の低体温の基準は、ライフステージによって異なってきます。
35.5度を下回った時
成猫
37.8度以下
体温によって3段階に分けられます。
この状態になってしまったら、迅速に適切な対応が必要です。
猫の低体温症の原因には様々なものがあります。
冷たいところに長時間いることで、低体温症が起こることもあります。
特に 子猫や老猫、持病のある猫は、体温調節機能が元気な成猫に比べると劣っています ので、室温には気を付けてください。
また、濡れていると低体温症を起こしやすいので、すぐに乾かしましょう。
乾かす際は、低温やけどに気を付けつつ、お腹から乾かすと良いです。
手術や麻酔による医療行為が原因になることも あります。
そのような処置を行った猫では、帰宅後も体温に気を付けてください。
様々な全身性疾患が低体温を起こします。
全身性疾患が原因の場合は、 その疾患に対する治療が必要 になってきます。
低血糖 や 栄養失調 など、体温を作り出すエネルギー不足でも低体温症は起こります。
特に低血糖は命に関わる危険性の高い疾患ですので、緊急受診が必要です。
高齢の猫で多く認められる 腎不全 も 、 末期では尿毒症に伴って貧血や体温低下が起こります。
代謝率を減少させるような疾患( 甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、副腎皮質機能低下症など )でも低体温症は起こります。
心疾患 による循環機能の低下や、 ショック 、 敗血症 の進行した状態でも体温は低くなります。
猫の低体温症では以下の症状が認められます。
また、低体温症の 初期では心拍数や呼吸数が増加しますが、重度になると低下 を起こします。
さらに免疫機能の低下や重度になると、 消化器の動きが著しく低下する ので危険です。
低体温症の結果として 腎臓に障害を起こす可能性も あります。
猫の低体温症の予後は、その重症度によっても異なります。
問題なく回復できる場合もあれば、臓器障害を起こしたり、死に至る可能性もあるのです。
低体温症の回復 は専門家が行っても 難しい処置のため、自宅で積極的に温める処置を行うことはおすすめしません。
回復後にも処置が必要になる場合 がありますので、 迅速に動物病院を受診してください。
成猫で32.2度を下回らない場合は、 体温低下を防ぐために猫を毛布などでくるみ 、 すぐに動物病院を受診 しましょう。
体温が32.2度を下回った場合は、 中等度以上の低体温症 を起こしてる可能性があります。
タオルでくるんだ湯たんぽなどでゆっくり温め ながら 緊急受診 してください。
ただし、積極的な加温を行う場合は以下の注意が必要です。
低体温症からの回復には危険が伴います 。
ただ、ひたすら温めるのではなく、注意して行う必要があります。
1時間に2度以上体温を上昇させると、特に子猫で 致命的な心臓や腎臓の障害を起こす可能性 があります。
体位をこまめに変えて均等に全身を温めるとともに、直腸温を頻繁に測定する必要があるのです。
1時間に2度以上体温をあげない ように、ゆっくりと温め体温もしっかりチェックしましょう。
成猫では体温が35度位になったら、積極的に温めることをやめましょう。
温め続けると、平熱以上の高温になってしまうこともあるのです。
体温が上昇しすぎると、それが原因で組織障害を起こす可能性 もあります。
回復期に末端の冷えた血液が循環し、中枢の温かい血液と混ざることで、 体温が上がってきてる最中にまた下がることも あります。
処置中は油断せずに、体温は確認しなくてはいけません。
低体温の新生仔には、強制的にミルクを与えてはいけません。
ミルクを与えても、消化器の動きが低下しているため腸管に送ることができません。
その結果ミルクが発酵し、ガスが発生することによりお腹が膨れ、 呼吸困難や循環障害を起こし死亡する可能性 があります。
しかし、低血糖を起こしてる新生仔の場合緊急的に血糖値をあげなくては命に関わります。
経口ではなく、血管を経由して血糖値を上げる必要があるため、すぐに動物病院を受診してください。
室温を上手にコントロールして、猫を低体温症から守りましょう。
子猫は成猫に比べて、体温を調節する能力が極めて低い です。
成猫になると、血管の収縮や、体の震えを起こすことで体温をコントロールすることができます。
しかし、特に生後6日目までの子猫では、体の動きで熱を作り出すことができず、震えの反射も起こらないため、環境温度の管理が非常に重要になってきます。
さらに、まだ自分でうまく動くことができない場合 は、 低温やけどを起こしてしまう可能性 もあります。
湯たんぽを使用する場合は、冷えないように気を付けましょう。
湯たんぽが冷えてしまうと、逆に体温を低下させる原因になり危険です。
また、新生児は脱水や皮膚の過剰な乾燥も起こしやすいため、湿度の管理も重要です。
子猫のいる場所の 湿度は55%〜60%位に保つ ようにしましょう。
子猫の時期は、適正な環境温度も週齢によって変わってきます。
子猫は体温調節能力が低いため、室温の影響をたいへん受けやすいので注意する必要があります。
生後1週齢:30〜32.2度
生後2〜3週齢:26.7〜29.4.度
生後4週齢〜:21.1.〜23.9度
幼弱な子猫では、特に気を付けて管理するようにしてください。
老猫では感覚機能が弱まっていて、低温やけどの恐れが若い成猫よりも高まります 。
積極的に温める暖房器具を使用する場合は気を付けましょう。
さらに高齢猫では、関節炎や持病などで動くことを億劫に感じている場合もあります。
水やトイレは、猫がよくいる場所の近くに置いてあげましょう。
老猫では脱水症状を起こすと多臓器不全などの重症につながりやすい ので、特に水の置き場には気を付けてください。
また、 エアコンのリモコン は猫が登れる場所にあると、自分で踏んでしまうことで設定を変えてしまう可能性もあります。
猫が絶対に届かない場所に置いておきましょう 。
猫のお留守番中に、室温を何度に保っていけばいいのか悩まれる方も多いと思います。
成猫の場合は、 20度前半ほどの室温 があれば良いでしょう。
室温はそのくらいに保ちつつ、さらに 湯たんぽ、暖かいベッドやペット用ホットカーペットなどを用意して、猫が自分で温度を調節できるように してください。
冬場に 暖房器具を使う場合に気を付けたいことは、低温やけど です。
猫は毛が生えてるため、飼い主が低温やけどの症状に気付きにくいこともあります。
安全そうに見える ドライヤー、ホットカーペット、湯たんぽなどでも低温やけどを起こす可能性 はあります。
特に 老齢で寝たきりの子や、まだうまく動けない子猫では注意 してください。
猫の場合、44度程度の暖房器具に3~4時間、46度程度の暖房器具に1時間程度触れていると、低温やけどを発症する可能性があると言われています。
それ以下の温度でも、猫の状態や時間によっては危険性はあるので十分に注意してください。
低温やけど を起こすと、 脱毛、皮膚の赤み、同じ場所をなめる などの症状がでることがあります。
自分で動けない子では体位の変換、ケージやベッドなどで暖房器具を使用する場合は逃げ場を作るなど、気を付けながら快適な環境を作ってあげましょう。
また、自分で動けても老齢の猫では体温感知能力の低下で、低温やけどを起こす可能性もあります。
ホットカーペットの場合は設定温度に気を付け、湯たんぽの場合は周りにタオルなどを巻いて、猫の体に触れる場所が高温になりすぎないように注意してください。
その子の状況や好みによっても最適なものは変わりますので、自分の子のお気に入りを見つけてあげましょう。
猫は暗いところや隙間にもぐるのを好む性質があるので、こういうもぐるタイプのベッドはおすすめです。
かまくら型のベッドや屋根がないタイプのベッドをあまり使ってくれない子では、試す価値があります。
少し薄めの生地なので、何か敷いてある上においてあげると良いでしょう。
こちらは敷物の中にアルミや発泡ウレタンなどの断熱層が内蔵されており、床から伝わる冷気をシャットアウトできます。
さらに、自分の体温のみで温かさを保温できるすぐれものです。
音がシャカシャカとなるので、敏感な子には向かない可能性がありますが、電気も使わず低温やけどの心配もなくおすすめです。
ペット用のホットカーペットです。
設定温度が調節できるものが良いでしょう。
低温設定で使えると、低温やけどの危険性が低くなるので安心です。
猫もコードをいたずらしてしまうことはありますので、噛めないように保護構造になっているものを選ぶようにしましょう。
また、本体の水拭きや一部水洗いができると、清潔に使用することができておすすめです。
サイズが小さいものを選ぶとベッドの下などに入れて使用する際に、半分を常温にして逃げ場を作ることができます。
低体温症は、重度になると命を落としたり、重大な臓器障害を引き起こすこともあります。
健康な成猫では低体温症を起こす可能性は高くありませんが、老猫、子猫や持病のある猫では特に注意する必要があるのです。
寒さ対策は、その猫の状況や年齢によっても最適なものは異なります。
最近では、熱源を使用せず自身の体温で暖かく保てるようなベッドや、敷物も販売されているので、そのようなものを使用することもおすすめです。
自身の猫にあった方法で上手に寒さを乗り切りましょう。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2021/11/08
公開日 : 2021/01/18