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5. エロモナス感染症(松かさ病、穴あき病、ポップアイ)・体表異常
熱帯魚の病気には、細菌や寄生虫、神経の異常などによって引き起こされる様々な病気があります。
この項目では、その病気の中でも特に代表的なものを順番に取り上げ、それぞれの 原因 と 症状 、 対策 についてご紹介します。
さらに、それぞれの病気に有効な薬も取り上げるので参考にしてください。
【原因】
白点虫(イクチオフティリウス)という繊毛虫の一種が体表に寄生することで発症します。
和名をウオノカイセンチュウと言い、こちらで紹介されていることも多いです。
水温が不適切だったり、餌が新鮮でなく水槽の中で腐ったりすることが原因となります。
熱帯魚が最もかかりやすい病気です。
【症状】
エラやヒレ先、体表の全身にかけて、芥子粒ほどの大きさの白点が現れます。
かゆみが生じるため、熱帯魚が体をこすりつけたりするようになります。
末期には体表がただれ、鰓に寄生されて死に至ります。
【対策】
水温の低い時期(25℃前後)に発症しやすいため、徐々に水温を 32℃ ほどに引き上げます。
冬季は特に注意です。
1時間ほど1%ほどの塩水(25度以上)で塩浴をするのも有効です。
メチレンブルー 、 グリーンF 、 ニューグリーンF 、 グルーンFリキッド 、 グリーンFクリア 、 アグテン 、 ハイトロピカル などによる薬浴も有効です。
【種類】
熱帯魚全般
【原因】
フレキシバクター・カラムナリス という細菌が寄生することで発症します。
魚の体表に傷があり、そこからこの細菌が感染することが原因です。
購入時から寄生されていることも多く、不安定な水温によっても発症します。
【症状】
ヒレ先が充血して溶けたり、 口のまわり が白っぽく変化したりします。
ひどくなると、ヒレや口まわりが欠けてしまいます。
鰓に傷があると、寄生されて急速に死に至ります。
【対策】
20℃前後で発症するので、水温を 30℃ ほどに引き上げます。
しかし、35度でも発育するカラムナリス菌もいるので、効果は限定的です。
全体の1〜2%ほどの塩水で塩浴するのも有効です。
メチレンブルー 、 グリーンFゴールド 、 グリーンFリキッド 、 エルバージュエース 、 アグテン 、 ハイトロピカル などによる薬浴も良いでしょう。
pH6.5以下では症状が表れないことから、意識的にpHを下げて飼育するのも効果的です。
【種類】
熱帯魚全般
【原因】
体表にできた 傷 に、真菌である水カビ菌(サプロレグニア・アファノマイセスヤアクリア等)が寄生することによって発症します。
ろ過が不十分であることも原因となり、水換えをしたばかりの時期に発症しやすいです。
傷は外的原因だけでなく、 尾腐れ病 など、他の病気が原因の場合もあるため注意してください。
【症状】
綿状の白っぽいカビが体表や傷口などに現れます。
特にエラ周辺に発症した場合は注意が必要です。
【対策】
日頃から熱帯魚が傷付かないように注意し、とがった石やオブシェを設置するのは避けましょう。
発症した場合は、 メチレンブルー 、 グリーンF 、 ニューグリーンF 、 グリーンFリキッド 、 アグテン などによる薬浴が有効です。
薬の塗布(薬浴より難しいので注意)も有効です。
体表からカビがなくなるまで水換えをして、水質管理を徹底しましょう。
【種類】
熱帯魚全般
【原因】
小型甲殻類の イカリムシ が、熱帯魚の体表に寄生することで発症します。
大型熱帯魚の餌となる活き餌が原因となり、発症することが多くあります。
【症状】
体表に細長いイカリムシが付着しており、肉眼で見ることができます。
かゆみから、体をこすりつけるような動きが多くなります。
ウロコにも異常が現れ、衰弱していきます。
【対策】
ピンセットで体表のイカリムシを取り除きます。(途中で千切れないよう全て取り除きましょう)
また、水換えをこまめに行います。
レスバーミン などの薬浴も有効ですが、量に注意してください。
【種類】
熱帯魚全般
【原因】
水質悪化により細菌が繁殖し、熱帯魚に感染することで発症します。
ストレス が原因となる場合もあります。
病気が進行すると死亡する確率が高く、治療が大変難しくなります。
【症状】
ウロコが逆立ち、剥がれ落ちる 松かさ病 、体表が充血し溶ける 穴あき病 の症状が現れます。
さらに、眼球が異常に突出し、悪化すると脱落する ポップアイ の症状が現れます。
【対策】
日頃から水質管理を徹底し、ろ過装置の掃除を定期的に行いましょう。
発症した場合は、 エルバージュエース 、 グリーンFゴールド 、 グリーンFゴールドリキッド 、 観パラD などの薬浴が有効です。
観パラD を餌に混ぜて与えることもできます。
【種類】
熱帯魚全般
ポップアイの症状は、特に 大型の熱帯魚 に現れやすいです。
【原因】
繊毛虫が体表に寄生することで発症します。
不安定な水温や、水質悪化が原因となることもあります。
【症状】
体表に細かい白点が現れます。
白点病 にも似ていますが、もっと細かく黄色味のある点です。
ヒレをたたみ、こまかく震えるようになります。
やがて動きが鈍くなり死に至ります。
【対策】
日頃から水質管理を徹底し、水温のチェックもこまめに行います。
発症した場合は水温を 30℃以上 に引き上げ、 メチレンブルー 、 グリーンF による薬浴を行います。
全体の0.5~1%ほどの塩水で塩浴をするのも有効です。
【種類】
テトラ類、卵生メダカなどの 小型熱帯魚
【原因】
フレキシバクター・カラムナリス などの細菌が繁殖することによって発症します。
ネオンテトラなどの小型熱帯魚に多く見られ、感染力の高い病気です。
【症状】
体色につやがなくなり、痩せていきます。
ヒレが充血し、白っぽくなります。
【対策】
観パラD などによる薬浴を行います。
はじめから感染していることが多いので、購入時に健康な個体かどうかよく見極めましょう。
【種類】
ネオンテトラなどの 小型熱帯魚
【原因】
輸入魚に感染した菌などにより発症します。
シクリッド類は特に注意です。
【症状】
体表にもやがかかったような白濁が現れます。
ヒレをたたむようになります。
【対策】
エルバージュエース 、 観パラD による薬浴を行い、1週間程度様子を見ます。
【種類】
ディスカスなどの シクリッド類
【原因】
エラに吸虫の ダクチロギルス が寄生することにより発症します。
水質悪化が原因となることもあります。
【症状】
水底でじっとしていたり、水面に上がって口をパクパクするようになります。
泳ぎのバランスを失ってしまう場合もあります。
エラが白色化していたら注意が必要です。
【対策】
グリーンFゴールド による薬浴を行います。
【種類】
熱帯魚全般
【原因】
餌の与え過による消化不良などから、平衡感覚を司る神経が異常を起こし発症します。
【症状】
異常な泳ぎ方をし、やがて横に倒れ転覆します。
突然転覆することもあります。
治療は難しいとされています。
【対策】
日頃から餌を与え過ぎないようにしましょう。
急激な環境の変化などにも注意です。
発症した場合は全体の0.2~0.3%の塩浴をするか、 グリーンFゴールド で薬浴して様子を見ます。
しばらく餌を与えず、水換えを行うと効果があるとも言われています。
【種類】
熱帯魚全般(熱帯魚にも見られますが、金魚に多く発症します)
病気の 予防と対策 について紹介していきます。
日頃からできる病気の 予防 と、発症後に行う 対策 には様々な方法がありますが、大きく 3つ に分けることができます。
それは、 1. 薬の投与 、 2. 塩浴 、水換えなどの 3. 環境改善 です。
ここでは、この3つに焦点を絞って、予防と対策の具体的な方法を紹介していきます。
薬を使った治療には、 薬浴 と 薬の経口投与 、 薬の塗布 が挙げられます。
どの方法も、病気の予防というよりは、 発症後に治療として行われる対策です 。
それぞれの方法を理解しておくことで、お飼いの熱帯魚が病気になった場合も冷静な対応をすることができます。
薬浴 とは、 治療のために水槽内にそれぞれの病気に合わせた薬を投与すること をいいます。
薬を使った治療の中では最もポピュラーで、やり方も比較的簡単です。
以下が、薬浴の手順になります。
餌に薬を混ぜて、病気の熱帯魚に与える方法です。
比較的症状の軽い熱帯魚に適した治療方法で、薬浴に次いでやりやすく応用性もあります。
薬には液体状のもの、固形のものがありますから、餌に染み込ませたり、すり潰したりする必要があります。
例えば、液体状の 観パラD をすりつぶした餌と混ぜ、だんご状にしたものを エロモナス感染症 の熱帯魚に与えることができます。
患部に直接、薬を塗布する方法です。
熱帯魚を水槽から取りだして塗布する必要があるため、技術的にも難しく慎重さが求められます。
以下が、手順となります。
薬を塗布するほかに、寄生虫などをピンセットで直接取り除く方法もあります。
例えば、 イカリムシ は肉眼でも見える寄生虫なので、取り除くことが可能です。
しかし、こうした患部に直接働きかける方法は、手早く行わなければいけませんし、正確に行わなければいけません。
薬浴、経口投与と比べて難しいので、自信のない方にはおすすめしません。
熱帯魚の病気には、それぞれに適切な薬がいくつかあります。
以下に代表的な薬と、それぞれに有効な病気を記載するので、ぜひ参考にしてください。
薬を投与する場合は説明書やパッケージの記載をしっかり確認し、投与方法や量を間違えないように気を付けましょう。
使用量を多めにすると、成分が強すぎて熱帯魚にとっては良くありません。(もちろん、複数の薬を混ぜて使うことは危険です)
薬の投与が必ずしも万能なわけではなく、熱帯魚にストレスを与えてしまうこともあります。
治療の判断が難しい場合は、信頼できるペットショップなどに相談するようにしてください。
塩浴 とは、 治療のために水槽内に塩を入れること をいい、薬浴の塩バーションと言えます。
薬を使った治療と同じくらいポピュラーな方法です。
淡水魚である熱帯魚に塩を使うことに疑問を感じる方もいるかもしれませんが、熱帯魚の体内にも塩分が存在します。
これを利用して、 古くから治療などに使われてきました。
発症後の治療 として使用することもできますし、 病気の予防法 として使うこともできます。
治療として行う場合、基本的な手順は薬浴と同じで、以下の通りです。
以上は治療用水槽に隔離して塩浴を行う場合ですが、もとの水槽で塩浴を行うこともできます。
ただ、その場合は塩に弱い水草やエビ類などに影響を与えてしまう可能性があります。
さらに、塩分を徐々にもとに戻すため、何度も水換えを行う必要があります。
やはり、隔離して塩浴させることをおすすめします。
その他に、病気の予防や水槽の消毒として塩を利用することもできます 。
この場合は、水槽に対してひとつまみほどの塩を入れます。
具体的には、 60cm の水槽に対して小さじ半分くらいの塩 です。
薬と併用して塩を入れると効果的な場合もありますから、ぜひ上手く活用してみてください。
水換えなどの 環境改善 は、一番基本的で大切なお世話です。
もちろんそれが熱帯魚の病気の 予防 となったり、 発症後の治療 になります。
そもそも、熱帯魚は水質管理や温度管理をしっかり行っていれば病気になりにくいといいます。
しかし反面、水質が悪化したり、急に温度が変化することで簡単に病気になってしまうのです。
そのため、水槽内の環境に気を遣うことは大切です。
食べ残しをなくすため、餌を与え過ぎないようにすることも病気の予防となります。
また、もし病気を発症した個体がいれば、 すぐに別の水槽に隔離しましょう。
このように、環境改善には行うべきことが様々ありますが、ポイントをまとめると以下の通りになります。
1. 水換え、水槽全体を含めた掃除をこまめに行う
2. 水温、水質を急激に変化させない(pHにも注意)
3. 餌を与え過ぎず、食べ残しはすぐに取り除く(生餌や活き餌は新鮮なものを与える)
4. 熱帯魚の健康観察を毎日行う(病気の個体はなるべくすぐに隔離する)
以上の点に気を付けて、しっかり病気の予防と対策をしましょう。
特に大切な水換えは、水槽の大きさなどにもよりますが、 1,2週間に1~2回程度行うのが理想です。
ぜひしっかりした飼育環境を整えて、熱帯魚の健康を守ってあげてください。
この項目では、 熱帯魚の健康チェック についてご紹介します。
実は、このまめ知識を知って頂くことが、これから熱帯魚を飼おうと考えていらっしゃる方にとても役立ちます。
もちろん、既に熱帯魚をお飼いの方が日々の健康チェックをする際にも役立ちますが、ここでの知識を、熱帯魚を購入する際に役立てることができるのです。
そうというのも、海外から時間をかけて輸入される熱帯魚の場合、購入時から病気にかかっていたり、かかりやすい状態であることがあります。
ですが、しっかり観察することで、より健康で病気に強い熱帯魚を選ぶことができるのです。
ぜひ健康チェックの方法をお知り頂き、素敵な熱帯魚を探してみてください。
健康チェックで一番大切になるのは観察ですが、ここでポイントとなるのは観察すべき対象です。
熱帯魚の体形の美しさは、とても大切です。
体形が整っているか、痩せ過ぎていたり肥り過ぎていないかどうかを確認します。
このとき、 口先 から 尾ヒレ にかけて順番に観察し、できれば色んな角度から見ましょう。
頭部の形がはっきりしており、体とのバランスが良く、 左右対称 かどうかもポイントとなります。
それぞれの ヒレの形 もしっかり確認しましょう。
同時に大きさもチェックしておくと、水槽や環境を整える際の参考にもなります。
熱帯魚の体色につやがあり、発色が良いかどうか、色味が淡くなっていないかなどを確認します。
このとき、 ウロコの状態や体表の異常 がないかどうかもチェックします。
発色が悪かったり、体表に濁りが見られたり傷がある場合、病気の疑いがあります。
鼻の孔から充血している場合も病気に感染している可能性が高いので、気を付けましょう。
眼の状態も重要なので、確認できるとなお良いです。
元気に泳ぎまわり、他の魚と群泳できているかどうかを確認しましょう。
水底でじっとしていたり、水面をうろうろしている熱帯魚は、病気の可能性があります。
尾ヒレの動かし方 にも注目できれば、より正確な観察が行えます。
以上の3点が重要な観察ポイントですが、この他にも購入時に注目すべきポイントが2つあります。
(1)輸入された熱帯魚の場合、入荷してどのくらいの期間が経っているか
入荷直後ですと、健康的に不安定なことが多いので、購入は避けた方が無難です。
ある程度の日数が経っていて、上記にあげた健康ポイントにあてはまる熱帯魚を選びましょう。
(2)熱帯魚の大きさが購入後どのくらい変化するのか
つまり、 成魚なのか幼魚なのか を、店員の方に確認して事前に把握しておくことが大切です。
幼魚を購入した場合、成長後に水槽の大きさに合わなくなってしまう場合があります。
事前にそれぞれの品種についての下調べもしておくと安心ですね。
もし初めて熱帯魚を飼育する場合は、色々な品種をたくさん飼うのは避けて、丈夫で飼いやすい品種を少な目に購入されることをおすすめします。
コリドラス や テトラ類 、 ラスボラ・エスペイ などは比較的丈夫で飼いやすいので、ぜひ参考にしてみてください。
熱帯魚の代表格ともいわれるネオンテトラやベタ、グッピーも、とても飼育しやすくおすすめです。
▼参考記事
・ ネオンテトラを飼うには?特徴と水槽づくり、病気ケア、おすすめの混泳魚など徹底まとめ!
・ こんなにも種類が!?熱帯魚「ベタ」の特徴と飼育方法を徹底解説!
・ 熱帯魚の定番グッピー!特徴・種類・飼い方から繁殖のコツまで
最後に、本記事の内容をおさらいしましょう。
主な方法は3つあり、発症後の治療として利用されることが多い。
水槽内に、治療のために塩を入れること。
諸説あるが、全体の0.5%程度(10リットルあたり50グラム)の塩を入れると良い。
発症後の治療や、病気予防の消毒として使われる。
消毒の場合は、60cmの水槽に対して小さじ半分くらいの塩を入れる。
発症後の治療や病気の予防となる、熱帯魚の健康を守る一番基本的な方法。
熱帯魚の購入時や、購入後の健康状態をチェックする方法。
その他の異常がないかを確認し、熱帯魚の健康や成長に合わせて対応ができるよう日々しっかり観察を行う。
熱帯魚の様々な病気や予防と対策の方法、健康チェックの仕方などがお分かり頂けたかと思います。
ここで取り上げたこと以外にも、まだまだ熱帯魚の健康を脅かす病気は存在します。
ですが、飼い主さんが気を付けてお世話を行い、日々観察を行うことで危険を避けることができるでしょう。
いつまでも飼育されている熱帯魚を大切にお世話してあげてくださいね。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/12/02
公開日 : 2016/11/14