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3. 人用のピーナッツバターやピーナッツお菓子を与えても良いの?
ピーナッツは犬に中毒を引き起こす成分が入っていないので、一粒くらいであれば食べても問題ありません。
それでも、多く食べてしまえば問題が生じることがあります。
そもそも、犬はピーナッツを食べたがるのでしょうか。
犬にピーナッツをあげてみると、喜んで食べる犬と、全く食べない犬がいます。
喜んで食べている犬も基本的に食欲がしっかりとあるため、人から貰ったものは何でも食べてしまう傾向があり、ピーナッツを好んでいるという訳ではないでしょう。
ピーナッツは犬にとって魅力的と感じる脂肪成分が沢山含まれているので、匂いは良いものだと感じるはずですが、食の好みがハッキリとしている場合、ピーナッツを与えても食べないことがあります。
人と違って犬は食べ物を咀嚼することがほとんどないため、ピーナッツを噛まずに丸呑みしてしまうことから、旨味を感じていないことの方が多いと考えられるでしょう。
犬にどのくらいの量のピーナッツを与えたら、下痢や嘔吐、アレルギーなどの有害事象が出るかという実験や報告がないので、明確な量は決まっていません。
ただ、ピーナッツは一粒で3~6kcalもあるハイカロリーな食材なので、一握りのピーナッツをあげただけでも犬の必要カロリーの1/3程度になってしまいます。
また、ピーナッツは硬く消化に悪い食材なので、咀嚼回数の少ない犬の場合、食べたピーナッツがそのままウンチに出てきてしまう可能性もあります。
獣医師の観点から見ると、あえてピーナッツを犬にあげる必要はないのですが、もしあげるとしても1粒くらいにしておきましょう。
人用のピーナッツ食品は塩分が添加されていたり、糖分を加えてペースト状になっていたりと、犬にとっても美味しく食べやすい状態になっていることがほとんどですが、これは犬にあげてはいけません。
まず塩分や糖分、そして脂肪分がとても多いものになっているため、犬の食事としては不適切です。
人が目を放した時に、犬がピーナッツバターの付いたパンを盗食してしまうと、体質と量によっては膵炎(すいえん)になってしまうことがあります。
中毒物質というわけではないので、一度の盗食ではケロッとしている犬もいますが、膵炎が重症化して点滴治療の入院が必要になってしまうこともあるので、ピーナッツは侮れません。
ピーナッツには犬にとって良い成分も含まれています。
多量でなければ、ピーナッツが犬の健康面に役立つことが期待できるでしょう。
食物繊維の代表とも言えるサツマイモと比較しても、ピーナッツにはその3倍の食物繊維が含まれています。
大半は不溶性の食物繊維なので、硬すぎる便を柔らかくしたり、便通を良くする作用が期待できます。
ピーナッツにはリノール酸とオレイン酸が含まれており、人では血中のコレステロールを下げる効果が期待できます。
必ずしも犬でこの効果が当てはまるかどうかは定かではないのですが、必須脂肪酸は身体に必要な栄養素であることは確かです。
抗酸化作用も含めて、細胞レベルで見れば犬の健康に効果があると期待できるでしょう。
犬の健康を維持するためには、人間と同様にマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分が必要ですが、犬でもそれは同様です。
ピーナッツにはミネラルが多く含まれているので、ミネラルを補給する効果が期待できます。
犬にとって良い効果が期待できるピーナッツでも、食べすぎれば身体に悪い影響が出てきてしまいます。
1粒でも栄養素がぎゅっと詰まっているピーナッツなので、少量だからと毎日あげていれば、供給過多になってしまうでしょう。
以下に、犬にピーナッツをあげすぎた時に懸念される状態を解説していきます。
脂肪分が多くカロリー密度が高いピーナッツなので、毎日のようにピーナッツを与えていると、少量であっても肥満を助長している可能性があります。
せっかくダイエット用や減量用のドッグフード与えているのであれば、1粒のピーナッツでその効果を台無しにしてしまうのはもったいないでしょう。
犬の体重が5kg〜6kgとして、体重50〜60kgの人と比較してみると、犬が3粒ピーナッツを食べた効果は人にとって約30粒のピーナッツを食べたようなものとなります。
30粒のピーナッツは人にとってもなかなかの量なので、犬にとっての3粒の効果がどれほど大きいものなのかを想像しやすいのではないでしょうか。
ピーナッツは不溶性の食物繊維が多く含まれているので、便の水分量を保持する効果があります。
そのため、多すぎるピーナッツの食物繊維によって、下痢が起きてしまうことがあることから注意が必要です。
食物繊維だけでなく、脂肪分やたんぱく質量の過多があって消化不良や吸収不良になることもあります。
もしアレルギーのようにピーナッツが体質に合わない犬では、少量のピーナッツでも下痢になってしまうかもしれないので、初めてピーナッツを与えるときはその後の便の状態もしっかりと観察しておきましょう。
持病で腎不全がある犬には、ピーナッツはおすすめできません。
初期の腎不全ではたんぱく質やリンの制限をすることで腎臓への負担を減らすことができるのですが、ピーナッツはたんぱく質が多く含まれている食材であり、リンなどのミネラルも豊富です。
さらに、大量のピーナッツによって下痢などが起きてしまうと、体の水分が便から失われてしまい脱水状態となり、これがさらに腎不全を悪化させます。
腎不全の治療として療法食を食べている犬であれば、ピーナッツを与えないようにしてください。
毎日のようにピーナッツをあげていると、尿中に結石ができやすいタイプの犬は尿路結石ができてしまうかもしれません。
尿路結石ができるかどうかは、その犬の体質や水分摂取量によっても大きくことなるのですが、食餌も大きな要因です。
たんぱく質やカルシウム、リン、マグネシウムの割合によって尿中に結石が出やすくなることが多いため、それらが多く含まれているピーナッツを多く食べていると、結石が増えたり大きくなる可能性が高くなります。
膵炎の治療中の犬や、慢性膵炎のある犬にピーナッツを与えるのはやめましょう。
膵炎は重症化すると命に関わる病気なので、膵炎の体質がある犬では食餌管理が健康にとって非常に大切になります。
そのような中でピーナッツを大量に食べてしまうと、その脂肪分やたんぱく質の多さで膵臓が悲鳴をあげて膵炎が悪化・再発してしまうこともあるでしょう。
長期の入院治療が必要になることもあるため、必ず獣医師から指示された食餌管理を守ることが大切です。
人の場合、ピーナッツはアレルギー反応を起こしやすい食品として注意されていますが、犬はピーナッツを食べる機会が少ないために、そこまでアレルギーが出やすいという食材ではありません。
しかし、どんな食材でもアレルゲンになる可能性があります。
もし犬にピーナッツを食べさせていて、以下のような症状が出るようであれば、アレルギーを疑いましょう。
以下に、食べたものによってアレルギー反応を起こす場合に多い症状を列挙します。
これらの症状がピーナッツを食べさせて数時間後に現れた場合は、ピーナッツが体質に合わない、アレルギー反応を起こしている可能性があるので、動物病院を受診しましょう。
もし愛犬がピーナッツによって激しいアレルギー症状を出した時、どのような様子になるのかを把握しておくことは飼い主にとって大切なことです。
ピーナッツを食べてすぐに変化が出るアナフィラキシーショックの状態であれば、以下のような症状が出ます。
これらの症状の全てが出るわけではありませんが、酷いアレルギー反応では体内でヒスタミンが大量に放出されるために低血圧になったり、気道が塞がれて呼吸困難になることがあります。
明らかにぐったりとしている時には、すぐに動物病院に連れて行くようにしてください。
明らかにピーナッツを食べ過ぎてしまって、下痢や嘔吐などが出てしまった時はどうしたら良いのでしょうか。
あるいはアレルギー反応が疑われるような症状が出ているときにも、様子を見ていて良いものでしょうか。
前述したようなアレルギー反応の症状が出ている時には、「治るかも?」と思わずにすぐに受診することがおすすめです。
基本的には食物アレルギーでも、アナフィラキシーになっていなければ段々と症状は落ち着いてくるのですが、ご家庭でアレルギー反応の重症度を見極めることがとても難しいので、念のために受診しておくことが大切です。
ピーナッツを食べた後に下痢が起きてしまったら、元気や食欲はあるか、吐き気はないか、そして下痢が1回で終わるかが受診のポイントになるでしょう。
元気や食欲がいつも通りで、吐き気はなく、下痢を1回したけれども、その後に何度も出てしまうことはないということであれば、自宅で要観察としても良いでしょう。
逆に、下痢だけでなく、吐き気や食欲不振まで起きてくるようであれば、膵炎などの可能性も考えなくてはいけません。
吐き気が出ているようであれば、下痢とともに体の水分がどんどん失われてしまうので、脱水状態が酷くなる可能性があります。
下痢以外の症状も出ているのであれば、受診しておいた方が安心です。
アレルギー症状が出てしまった時には動物病院を受診して、アレルギー反応の重症度を確認します。
病院で行われる検査は以下の流れが多いです。
1の時点でアナフィラキシーを疑われるケースでは、諸検査よりも先に治療が始まることもあります。
これら全ての治療が行われるわけではないですが、重症になり呼吸困難が出ているようなケースでは緊急治療が必要なことが多いです。
急に鼻を鳴らすようになり、むせるようなクシャミの症状が酷く出るというミニチュアダックスフンドがいましたが、その原因は食べたピーナッツがむせて鼻に入ってしまったからというケースがありました。
飼い主さんもピーナッツをあげたことを覚えておらず、細菌性の鼻炎でもアレルギー性の鼻炎でも無い、歯根に問題もないため、鼻咽頭に問題があるだろうということで内視鏡で鼻咽頭を確認したところ、ピーナッツが入っていたことが判明しました。
1粒のピーナッツのせいで、本人は鼻の不快感や違和感が辛かったことでしょう。
たくさんの検査と診断的な治療が行われ、全身麻酔をかけての検査でやっと原因が判明して治療をすることができたのです。
たかがピーナッツと思わず、予想外なデメリットが愛犬に出ることもあると知っておいてくださいね。
ピーナッツは犬にとって中毒は起こさないものの、犬の食性に合うとは言えない食材なので、取り扱いには注意が必要ということはお分かり頂けたかと思います。
犬の種類によっては、脂肪代謝が苦手であったり、高脂血症や胆泥症、尿石症、膵炎、皮膚炎が起きやすい体質を持っていますので、ピーナッツはあげない方が良いでしょう。
Mシュナウザーは高脂血症の系統であることが多く、さらには尿路結石が出ることが本当に多い犬種です。
ピーナッツを少量でも毎日あげるようなことは絶対にやめましょう。
シーズーも尿路結石が多く出る犬種であり、かつ脂漏性皮膚炎を患うことが多いので、食べ物には注意しなくてはいけません。
ピーナッツの脂肪分が皮膚炎に対して良い効果を出すよりも、尿路結石が出来てしまうことの方がリスクが高いでしょう。
太りやすい犬種でもあるので、高カロリーのピーナッツは食べない方が良いです。
致命的な病気にかかりにくいトイプードルは、健康面からするととても優秀な犬種なのですが、脂肪代謝や消化吸収が苦手な場合もあります。
体質によっては、高脂血症傾向や慢性膵炎になっていることも多いので、ピーナッツの給餌もおすすめできません。
膵炎、高脂血症、尿路結石になりやすい犬種です。
体格も超小型犬に分類されるように、4kg未満のヨーキーが多いので少量の食べ物でも、その身体への影響は大きいのです。
そのため、ピーナッツをオヤツであげるのも推奨されません。
アレルギー体質が特に多いのが柴犬です。
早い場合は生後4カ月の子犬の時期から食物アレルギーの症状が出ます。
皮膚症状としてアレルギー反応が出てくるので、アレルギー性の皮膚炎と診断されていて、低アレルゲン食や加水分解タンパクなどのドッグフードを処方されている柴犬は、ピーナッツもあげない方が良いでしょう。
ピーナッツは犬が食べても大丈夫な食材で、健康に良いと言われる必須脂肪酸や食物繊維、ミネラルが豊富に含まれています。
しかし、与える量や頻度、犬の体質によってデメリットの方が多くなってしまうでしょう。
噛まずに飲んで、運悪く鼻の変なところにピーナッツが詰まって苦しむ犬もいますので、もしピーナッツを与える際には本記事の内容をもとに十分注意してください。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2023/02/27
公開日 : 2023/02/27