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2. 犬のダイエット用のドッグフード選びの基準とキャベツの併用の注意点
愛犬にキャベツを与えてみたことはありますでしょうか。
食欲旺盛の犬に、キャベツを与えると喜んで食べます。
筆者が動物病院でホテル預かりをする時に、キャベツをトッピングとして持ってくる飼い主さんもいました。
もちろん、あまり食に興味のない犬であれば、あえて野菜であるキャベツを食べたいとは思わないでしょう。
犬は雑食であるものの基本的には肉食であり、動物性の脂肪やタンパク質を好むので、野菜が何よりも好きということはほとんどありません。
減量中で、少量を低カロリーのオヤツとして活用する場合は、犬の健康面にも問題は出ないでしょう。
キャベツは、犬にとって食中毒になるような成分は含まれていません。
そのため、持病が無ければ食べても大丈夫です。
"持病が無ければ大丈夫"というところがポイントです。
もしオシッコの中に結晶や結石ができやすい体質である「 尿石症(尿路結石症) 」であった場合は、キャベツを毎日あげるのは問題があります。
キャベツも野菜なので、シュウ酸やミネラル(カルシウム、マグネシウム、リンなど)が含まれているためです。
これらは尿中の結石の材料になります。
せっかく治療食を食べて、尿中に石が出来ないように予防しているのに、体質によってはキャベツによって石が出来てしまうかもしれないのです。
病院で処方される治療食はとても高いですよね。
尿路結石の予防には、治療食がお薬のように効果的です。
食べ物によってオシッコの性状も変化するため、食餌による治療が最も大切と言えます。
この効果を減弱させてはもったいないので、尿石症の犬であればキャベツを控える方が良いでしょう。
それでも犬にキャベツを与えるメリットはあるのでしょうか。
それは、大きく2つあります。
1つ目は、犬が喜ぶということ。
ご褒美として、あるいはコミュニケーションの道具として、少量のキャベツを与えるのは良いことです。
2つ目は、食物繊維やビタミンが含まれていることです。
食物繊維は、人と同様に血糖値の急上昇を防ぎ、便秘気味の時には快便に繋がります。
体に良いビタミンの代表であるビタミンCも含まれているので、その点も喜ばしいことと言えます。
ビタミンCは抗酸化作用があり、生き物の細胞で作られた活性酸素が細胞を傷つけるのを防いでくれます。
そのために、ビタミンCによって免疫力アップ、あるいは老化を抑えると言われているのです。
しかし、人やモルモットと違って、犬はビタミンCを体内で合成することができます。
つまり、食べ物で摂取しなくても問題ないのです。
食べても悪いことはないのですが、必須でもないということになります。
キャベツには、少量ながら甲状腺ホルモンを合成するのを邪魔する物質が含まれています。
それは、 ゴイトロゲン(甲状腺腫を誘発) と チオオキサゾリジン(甲状腺ホルモン合成を抑制) です。
セキセイインコなどの飼い鳥にアブラナ科の野菜を常時あげると、甲状腺機能低下症や甲状腺腫を引き起こすのは、獣医師としての知識として一般的です。
中高齢の犬においても、甲状腺ホルモンが少なくなる甲状腺機能低下症を発症することがあります。
もし犬もキャベツを食べ過ぎていて毛が薄くなる、元気が無くなるなどがあれば、甲状腺機能低下症になっているかもしれません。
すでに甲状腺機能低下症と言われている犬も、キャベツは止めておいた方が良いでしょう。
犬はキャベツを追加することによって、満腹感や満足感を感じてくれるのでしょうか。
筆者は獣医師になる前は、それを期待して愛犬に茹でたキャベツを追加していた訳ですが…あまり満腹感や満足感は無かった印象です。
それもそのはず、犬は基本的に満腹中枢が鋭敏ではありません。
つまり、お腹いっぱいで満足とはなりにくいということです。
食欲旺盛な犬であれば、キャベツでカサ増しをしても、相当な量のキャベツを入れなければ満腹で幸せと感じることは少ないでしょう。
また、本当に胃がパンパンになるほど食べてしまうと、 胃拡張胃捻転(いかくちょういねんてん) という病態になってしまうことがあり、命の危険性もあります。
それを防ぐためにも、一度に食べる量を増やすのではなく、食べるタイミングを増やすために遊びとトレーニングを組み合わせて、ご褒美にドッグフードを少しずつあげるのがおすすめです。
キャベツのカロリーは100gあたり20kcal前後です。
体重5kg前後の犬の一日のドッグフード量がだいたい100g前後で330kcalほどです。
それと比較すると、キャベツがいかに低カロリーかがわかると思います。
犬のダイエットには以下の大きく3つのステップがあります。
人も同じですが、摂取カロリーが消費カロリーよりも多いので肥満になってしまいます。
この必要カロリーを守っていれば太らないので、もっと食べたい!何か頂戴!と犬がねだる時にキャベツを一枚ほど千切ってあげるのは問題ありません(持病がない場合に限る)。
今までに、愛犬の一日に必要なカロリーを計算したことはありますでしょうか。
「ドッグフードの袋に記載されている量を与えていれば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、これは半分正解で、半分不正解です。
なぜなら、袋に書かれている給餌量はあくまでも"目安"で、愛犬にピッタリな給餌量という訳ではないからです。
それでは、犬の一日に必要なカロリー計算とはどのようなものなのかをご紹介します。
意味は、簡単に言うと「その動物が動かずに、ただ生きているだけで必要なカロリー」ということです。
計算式は以下の通りとなります。
RER=(体重) 0.75 ×70
電卓があれば、「体重×体重×体重=√√×70」を押すと計算することができます。
例えば、体重が3kgの犬の場合
→RER=約159kcalとなります。
通常の生活をしているワンちゃんは、入院動物と違って活動性があります。
散歩に行ったり、ドッグランに行ったり、お子さんの居る家庭では遊びに付き合わされたり、多頭飼育のワンちゃんならじゃれて遊んでいることもしばしば。
すると、RERだけでは摂取カロリーとしては不足するので、「係数」というものをRERに掛けます。
「RERに係数をかけたもの」をDERと言い、犬が一日に必要なカロリーとなります。
この係数は年齢や活動性によって変化します。
成犬では、性ホルモンの関係で代謝も変化するので、避妊去勢手述を受けたかどうかによっても係数は変わります。
この係数0.2の違いで、避妊去勢後の犬はどんどん太っていくため要注意です。
ダイエットを考えている肥満犬での係数はこちら。
すでに肥満傾向にあって減量が必要なワンちゃんは、係数を1.0-1.3にしなければ減量できません。
しかし、急に係数を1.0にすると、ご飯の量が足りなくていつでも「お腹が空いた!ご飯ちょうだい!」という状態になってしまうかもしれません。
それでゴミ箱を漁ったり、ドッグフードの袋を見つけ出してきて破いてたくさん食べてしまったりということもあり得ます。
そんな欲求不満を解決する一つの手段として、オヤツ代わりにキャベツをあげるのはおすすめです。
低カロリーで、繊維質と水分が多いキャベツなら、間食や補食としてぴったりです。
通常のオヤツでは直ぐにカロリーオーバーになってしまうところですが、キャベツであれば大きくカロリーオーバーになることはまず無いでしょう。
必要カロリーを計算できたら、次はダイエットフードを選択しましょう。
沢山のキャベツをあげる場合は、そのカロリー分はドッグフードを減らすのも忘れずに。
「これを食べれば痩せる!」というようなサプリメントやドッグフードは存在しないので、そこは注意してください。
逆に「このドッグフードをDERを守って与えれば痩せる!」という減量に最適なドッグフードはいくつもあります。
一番に効果的で信頼度が高いのは、動物病院の処方食です。
【満腹感】【メタボリクス】【減量】【血糖値に配慮】【繊維】などのキーワードが入った減量フードは、犬の満足度も大きくてストレスも少なく、決まった量を上げていればほぼ減量に成功します。
また、動物病院の減量ドッグフードにはドライフードだけでなく、缶詰やパウチなどウエットフードの形状もあります。
これらはワンちゃんも喜んで食べることが多く、また血糖値も上がりにくくて水分量が多いので、尿路トラブルを防止することができます。
キャベツも水分も多く含まれているので、その点もメリットです。
ただし、キャベツもあげて減量用のフードもあげるとなると、排便の量が増えるかもしれません。
それだけ繊維質の多い食餌になっているという証拠なのですが、あまりにも便の量が多くて困ってしまう場合はキャベツの量は減らしましょう。
ワンちゃんがキャベツ好きということであれば、散歩の時にキャベツをご褒美にあげるのがおすすめ。
最初に必要カロリーを計算して、減量フードを活用して、体重が減ってきたら少し運動量を増やすと良いです。
無理な運動量の増加ではなく、散歩の時間を10分長くするのでも十分です。
散歩時のご褒美をキャベツに変更するだけでも摂取カロリーが減少するので、ダイエットの一歩を踏み出していることになります。
明らかな過体重の犬は、走ると膝の靭帯(じんたい)が切れます。
あるいは背中や腰を痛めて、椎間板ヘルニアの症状が出ることもあります。
イビキをかくような体型では、過度な運動で咳が増えたり、呼吸が苦しくなることもあるでしょう。
どこかを痛めてしまうと、治療が必要になって犬の活動性はさらに低下し、飼い主さんのモチベーションも下がってしまいます。
愛犬の健康のためのダイエットで、飼い主が健康を害してしまっては元も子もありません。
無理な運動はしないのが鉄則です。
もしご自宅のワンちゃんがキャベツが好きという場合には、キャベツはダイエットに役に立つことでしょう。
何より低カロリーですし、添加物もなく、水分も多く含まれているからです。
いつも追加であげてしまうご飯やオヤツの代わりに、キャベツに置き換えてみるのも良いですね。
もし持病がある場合には、キャベツを与えることが病気の原因になることもあるので、必ずかかりつけの先生に確認が必要です。
ぜひ動物病院と協力して、健康寿命の長いワンちゃんを目指しましょう。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/04/28
公開日 : 2022/04/28