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犬の鼻は 人間と違い、 常に湿っています 。
しかし、犬の鼻水がびよーんと垂れてる瞬間を見かけることはそんなに多くないかもしれません。
垂らすことがあっても、犬はすぐに自分でぺろぺろと舐め取ってしまうため、飼い主さんが気付く機会が少ないのです。
それでは、犬の鼻水は心配した方がいいのでしょうか。
また、人間の鼻水のように病気のサインの可能性はあるのでしょうか。
犬は様々な理由で鼻水を垂らします。
犬の鼻水 は 病気のサインの可能性 もありますし、 生理的な理由が原因 で垂らすこともあります。
犬の鼻水を垂らす理由によっては、動物病院の受診が必要になることもあるのです。
犬の鼻水は様々な色や状態で出てくる可能性があります。
片方の穴から出てるのか、両方の穴から出てるのかにもよって心配度も変わってきます。
さらさらで透明な鼻水 を犬が垂らしている時は、 生理的な原因で出ることが多い です。
その場合、たらりと垂れていても特に心配する必要はありません。
ただし、 アレルギーや鼻炎などの初期症状でも透明でさらさらした鼻水が出る ことはあります。
そのため、さらさらで透明な鼻水でも、長期間継続して認められる場合や量が多い、くしゃみが出る、食欲不振や元気がないなど他の症状がある場合は、動物病院の受診を検討しましょう。
犬の鼻水に色がついている場合は注意が必要です。
特に 黄色や緑色の鼻水は細菌感染を起こしている可能性 も考えられます。
その場合、膿のような臭いニオイがすることもあります。
そのような鼻水が認められた場合は、早めに動物病院を受診してください。
犬の 鼻水に血が混じってる場合も注意が必要 です。
鼻水に少し血が混じってるだけなら、炎症の結果で軽度の出血を起こした可能性も考えられます。
しかし、 赤い鼻血が出るようだと腫瘍の可能性 も考えられます。
犬が元気がなかったり 呼吸のあらさ とともに、 ピンク色のさらさら鼻水を出している時はとても心配 です。
肺水腫 などの、肺に液体が溜まる状態になってる可能性があります。
もし肺水腫にかかっていたら 命に関わる緊急状態 ですので、すぐに受診するようにしましょう。
鼻水から考えられる病気は色々あります。
老犬でよく見られる、歯垢中の細菌が原因で歯肉が腫れてしまったり、歯を支えている周りの組織が破壊されてしまう病気です。
犬の歯根はとても長く、眼で見える部分の倍くらいの歯根が歯肉に埋まっています。
特に犬歯の歯根は鼻の穴のすぐ近くにまで達しているのです。
そのため、 歯周病が重度 になると鼻腔にまで細菌が入り込んでしまい、 鼻炎の原因 となります。
お口のニオイ が気になったり、 歯に歯石がたくさんついてる 子が頻繁にくしゃみをしたり、色付きの鼻水を出している場合は要注意です。
治療としては、悪さをしている部分の抜歯が適応となります。
抜歯後は口の中と鼻腔に大きな通り道ができてしまうので、歯肉でその穴を塞ぐ処置が必要となってきます。
鼻腔内に炎症が起こる状態を総称して鼻炎といいます。
細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生虫性、アレルギー性など 様々な原因で起こります。
犬は鼻が人間より利くので、 タバコやニオイのきつい香料 (芳香剤や柔軟剤など)などの 刺激物にも過敏に反応して、くしゃみや鼻水を出すこともある のです。
犬のためにも、それらのものを犬の近くで使用しないように気を付けてあげましょう。
鼻水の色や性状は原因によって変わります 。
アレルギー性であれば初期ではさらさらした透明な鼻水、進行して細菌感染などを併発すると色のついた鼻水に変化することもあります。
人間でいう 風邪のような症状 を犬に起こす病気です。
特にワクチンの接種が終わっていない、免疫が不安定な子犬がよくかかります。
膿のような鼻水の他に、咳、発熱、食欲不振やくしゃみなどの症状を起こします。
重症化すると、肺炎に進行 してしまうこともあります。
特に体力のない子犬は、早めに受診することがおすすめです。
鼻水、高熱、目ヤニ、元気や食欲の低下の他に、嘔吐や下痢を起こす子もいます。
病気が進行すると、痙攣発作や麻痺などの神経症状が起こることもあります。
後遺症で麻痺などがが残る場合もありますし、 死亡率の高い 恐ろしい病気です。
感染した犬の目やに、鼻水、唾液、尿、糞便などの排泄物に触れたり、咳やくしゃみなどの飛沫によって感染します。
ワクチンが有効な病気 なので、ワクチン接種をすることで予防効果や感染しても症状が軽度ですむことが期待できます。
感染した犬が近くにいる場合、他の犬にうつってしまう可能性があるため消毒を徹底することが重要です。
この病原体には、アルコール消毒も有効です。
肺に液体がたまり、 呼吸困難に陥る可能性 のある危険度の高い病気です。
肺にたまった液体が、肺から溢れて鼻から出てくる様子が、鼻水が出ているように見えるのです。
ピンクの泡状 に出てくることが多いです。
原因としては心臓が原因の心原性肺水腫、それ以外が原因の非心原性肺水腫の可能性があります。
心臓病が進行すると、肺水腫を起こす可能性があります。
非心原性肺水腫では様々な原因がありますが、チョークチェーンなどで窒息状態になってしまったり、感電事故が原因で起こることもあります。
肺水腫の場合は、ただ単に ピンクの鼻水がでているだけという状態ではなく、呼吸が苦しい様子や、歯茎が白っぽくなるなどの症状 が伴います。
鼻水の他に、 呼吸状態に異常を感じたら緊急事態としてすぐに動物病院を受診 してください。
また、重度の肺炎でもピンクの鼻水が出ることもあります。
鼻の中にできる腫瘍によっても、鼻水は認められます。
犬の腫瘍のうち、鼻腔内、副鼻腔内に発生する腫瘍は犬の腫瘍の内の約1%といわれており、老齢の子に多く発生します。
日本では、ゴールデンレトリーバーや柴犬などの中・大型犬に多く発生が認められ、シェットランド・シープドッグなどの長頭種に発生しやすいという報告もあります。
特に中高齢の犬で数ヶ月にわたり持続する鼻の症状、片側の鼻のみの症状には要注意です。
鼻水や鼻出血 に伴って、 鼻梁がもりあがる、眼が突出する、などの顔貌の変形 が認められることもあります。
治療としては、放射線療法が有効です。
中高齢 の子で続く鼻の症状がある場合は、進行してしまわないよう早めに動物病院を受診しましょう。
病気ではない要因でも鼻水が出ることはあります。
急に寒い空気を吸い込んだ時 、なるべく体温に近い温度に調節してから肺に送るために、鼻の奥で空気を暖める働きがあります。
冷たい空気に反応して、鼻への血液供給量が増え、鼻の中の毛細血管が広げられています。
その働きによって、同時に鼻水の分泌も活性化されるのです。
また、 犬が緊張した場合 アドレナリンの作用によって、鼻の粘膜への血流量が増え鼻水の分泌が促進するといわれています。
その他にも、ホコリなどの 小さな異物が鼻の中に入ってきた時 も、排出するために鼻水の分泌量が増えます。
散歩中によく草ムラでフンフンニオイをかぐ子では、 イネ科の植物の毛の生えた草の実などを吸い込んでしまうこと もあります。
それがなかなか出てこない状態になってしまうと、鼻の中で刺激を起こし排出するための反応として鼻水やくしゃみを起こします。
この場合の鼻の症状は、片側のみの場合が多いと思います。
時には、麻酔をかけて鼻から取り除く処置が必要になる場合があります。
嘔吐した後にくしゃみや鼻水が認められる場合は、 鼻の中に吐いたものが残ってしまっている可能性 があります。
その場合、排出するために鼻水の分泌が増えたり、くしゃみの回数が増えることがあるのです。
また、時間が経過すると炎症が強くなり重症化すると骨が溶けてしまうこともあります。
吐瀉物が鼻の中にあると、臭い腐敗臭のようなニオイがすることもあるので、気になる場合は確認してみましょう。
心当たりがある場合は、早めに受診を検討してください。
鼻水が生理的な要因である可能性が高い場合は、特に処置は必要ありません。
病的な要因の可能性が高い場合は、動物病院の受診と併せて自宅でもしてあげられることがあります。
鼻水が鼻の周りについているのを放置 していると、 皮膚炎を起こしてしまう可能性 があります。
鼻水がついていたら、こまめに優しく拭き取ってあげてください。
こびりついてしまっている場合は湿らせた温かいタオルなどで、ふやかしてからとってあげましょう。
鼻水が出ている時は、いつもよりニオイが感じ取リにくくなっていることがあります。
それによって食欲が落ちてしまうこともあるので、少しごはんを温めて ニオイをたたせるようにしてあげましょう 。
歯周病が原因の場合は、口の痛みで食べにくいこともあります。
そのような状態の時は、ウエットフードなどの柔らかいごはんにしてあげましょう。
乾燥していると、鼻水が出にくくなってしまいます。
本来、鼻水には病原体などを体外に排出する役目があるので、出しやすくしてあげることも重要です。
部屋の湿度を乾燥しないように調節 してあげましょう。
加湿器が無い場合は、濡れたタオルを犬の近くに干してあげることもおすすめです。
犬の鼻水は生理的なことが原因の場合もあれば、病気のサインの可能性もあります。
また、短頭種といわれる鼻ぺちゃ系の犬種は、他の犬種に比べて鼻水を出しやすいともいわれています。
愛犬が鼻水を垂らしていた場合は、色、状態、片側か両側か、体調はどうか気を付けて観察するようにしましょう。
病気の種類によっては時間が経つと症状が進行して治りにくくなってしまいます。
「おかしいな」と思った場合はあまり様子を見ないで、動物病院を受診するようにしてください。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2021/01/04
公開日 : 2021/01/04