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うちの猫が私(飼い主)に向かってクラッキングしてくる理由は?
猫の クラッキング とはどのようなものなのでしょうか。
猫の鳴き方の一種 がこのような名前で呼ばれています。
猫はその時の状況や、気持ちの変化に併せて様々な鳴き声を出します。
実際に猫を飼っている方では、猫のバリエーション豊かな鳴き声を既にご存知でしょう。
家に帰ってきたら「プルルルン」と言いながら近づいてきたり、ごはんの袋を開けたら「ニャー」と叫びながら近づいてきたりと、猫の声から私達が読み取ることのできる彼らの気持ちは少なくありません。
一般的に日本でいわれている、いわゆる猫のクラッキングは、英語では「chatterihg」といいます。
これは音を出さないで顎の動きのみで「カカカッ」という音を出す行動を指します。
普段の生活で耳にする機会が多い鳴き方ではないので、はじめて聞くと「大丈夫?何か口に異常が起こったの?」と心配になってしまう方もいるかもしれません。
また、細かく分類すると「chirping」という動作もあり、細かく口を動かして、甲高く短い声をだす行動を指します。
猫はこれらの行動を、一連の流れで交互に行うこともあります。
他にも「chirping」の音が小さいと「weeting」、長い音だと「tweedling」という風に区別している人もいるようです。
日本では、これら全てをひとまとめにしてクラッキングと呼んでいることが多いです。
クラッキングをする時、多くの場合猫は窓の外の鳥などをじーっと見つめながら口角をぐっと後ろの方にひいて、顎を細かく痙攣するように震わせながら音を出します。
実際の音はその個体によって様々ですが、「ケケケッ」「クククッ」などの歯を鳴らすような音や、「ウニャニャニャ」というような普通の鳴き声がかなり細かく途切れて続くものなどいろんなバージョンがあります。
厳密にいうとそれらは全て違う鳴き方の分類になりますが、日本ではまとめていることが多いです。
猫のくしゃみは、人間と同じように「クシュン」と大きい音が出ることがほとんどなので、クラッキングとの違いはわかりやすいと思います。
また、猫のくしゃみの中には人間がするようなくしゃみの他に、逆くしゃみというくしゃみも見られることがあります。
頭を低く下げて、息を断続的に大きく吸い込むことによって「ブーッブーッ」というような豚が鼻を鳴らすような大きな音を出します。
音がなってるタイミングで、胸が大きく広がっていたら逆くしゃみの可能性が高いでしょう。
逆くしゃみの発生するメカニズムは解明されていませんが、他に異常がない場合は特に受診する必要はないといわれています。
あまりにも頻発したり、数分以上長く続くようであれば病気のサインの可能性も考えられるので、動画を撮影して受診してみるのもおすすめです。
その他、口の中に何か出来ていたり、炎症が起こっていたりなど異常がある場合も歯を鳴らす可能性があります。
クラッキングのような仕草が頻繁に見られたり、長時間続く場合も一度受診してみることがおすすめです。
猫がクラッキングする理由に関しては色々な説があります。
最も一般的にいわれているのが、 獲物を捕りたいのに捕ることができない状況で発生する欲求不満のサイン です。
例えば窓から猫が外を眺めていて、すぐ近くに鳥がいてのほほんとさえずっているのを見ている時。
猫は耳を前の方に傾け瞳孔をまんまるにして、凄まじい集中力で鳥を見つめながらクラッキングをすることがあります。
猫がクラッキングしている動画などを検索しても、このシチュエーションが一番見かけることが多いと思います。
猫は獲物をよく見ることができますし、獲物となりうる鳥は全く屋内の猫に気づいておらず、窓ガラスさえなければ絶好のハンティングチャンスです。
しかし、窓ガラスがあるので、実際には猫は鳥を見つめることしかできないのです。
このような欲求不満の気持ちが高まる時に、 猫はもやもやした気持ちを発散させるためにクラッキングをするのではないか といわれています。
猫の行動学者であり、サンフランシスコの猫の認定行動コンサルタントであるMarilyn Kriegerさんは、猫がクラッキングすることに関してこのような考えを述べています。
猫が獲物を見つけた時にアドレナリン、ドーパミンのような神経伝達物質や、コルチゾールなどのホルモンが急増する影響でこの行動が起こっている可能性 があります。
他にも獲物の刺激だけではなく、ガラス越しに見えてるのに決して捕ることができないという欲求不満状態を表している可能性もあります。
猫によっては、 ただ単に遊んでいる時にクラッキングの行動を出す個体も います。
実際にレーザーポインターで遊んでいる最中にこのような行動をみせる猫もいます。
他にも、 猫のクラッキングはハンティングの手法の一つだという説 もあります。
マーゲイという主に密林で樹上生活をするネコ科の動物が、タマリンという猿の一種をハンティングする際に、この猿の赤ん坊の鳴き真似をする声を研究者が聞いたというのです。
このマーゲイ、見た目はベンガルに非常によく似ています。
体の大きさも、一般的な猫ほどの大きさです。
この報告は、非営利団体の野生動物保護協会から発表されました。
この団体のメンバーで研究者でもあるFabioRoheさんは、おそらくこれが南北のアメリカ大陸において、猫が獲物を捕るために行った模倣行動を科学的に記録した最初の事例だと述べています。
またFabioさんによると、「この時のマーゲイの鳴き真似はすごく似ていたわけではないが、近くで餌を食べていた好奇心旺盛な大人のタマリンを引きつけるには十分だった。」とのことです。
結局、マーゲイの姿を見たタマリンは逃げていってしまいその時のハンティングは失敗に終わってしまったそうです。
Fabioさんたちは、アマゾンの中心部に住む人々にこの事例について聞き取り調査を行いました。
その結果、マーゲイに限らず クーガーやジャガーなどのネコ科の大型肉食獣も、獲物の鳴き真似をしてハンティングを行っているのを見たことがある という人々がいたそうです。
Fabioさんは、 この鳴き真似行動は全ての猫が行うことができて、生き残るための戦略として母から子に受け継がれているのではないか と述べています。
他にも猫のクラッキング時の顎の動きは、 獲物の止めをさす時に顎を痛めないように準備運動している説 を唱えている人もいるそうです。
猫は獲物をとらえる時に、頸髄や後脳を狙い鋭い牙で貫通させて止めをさすことが多いので、獲物を見ながらその時に備えているのではないかということのようです。
野良猫はこのクラッキングの技術を駆使して、鳥のハンティングを成功させているという話もあるそうです。
様々なネット上の猫のクラッキング動画を見てみると、外でさえずっているそれぞれの鳥の鳴き声に非常によく似た声を出している猫が多いです。
いずれにせよ、 クラッキングは猫の狩猟本能に関連した行動である可能性が高い と言えるでしょう。
一般に私たちが飼う猫だとしても、彼らの遊び行動は全てハンティングの練習 です。
特に完全室内飼いだと常に寝ているかわいい子供のような猫たちですが、彼らは生まれながらの優秀なハンターなのを忘れてはいけません。
先述したように、クラッキングはハンティングに関連して起こっている行動である可能性が高いので、 おもちゃにもクラッキングする可能性はあります 。
この場合、 おもちゃも彼らにとっては立派な獲物 なのです。
一緒に楽しく遊んでいる時に、飼い主さんに対してクラッキングをする猫が多いようです。
おもちゃを飼い主さんが持っている時によく見られます。
一般的に猫が飼い主さんにクラッキングしていても、過剰に心配しすぎることはありません。
ただし、猫の興奮が過剰になってしまっている可能性が高く、普段攻撃的な子ではなくても怪我をさせられてしまう可能性も出てきます。
このような状況が発生したら、遊び続けるのではなく一度遊びをストップして猫の興奮を抑えましょう。
人間には見えない小さなホコリなどを見つけて、それがフワフワしている様に狩猟本能を刺激され、興奮しているという説もあります。
また、猫の行動研究で猫はハンティングに関する興奮が鬱積しやすく、それを実際の獲物で発散できないときは獲物以外のもので発散する行動が認められるというのです。
例えば、ホコリ、紙くずなど、どんなにつまらないものでもいいのです。
極端な話をすれば、猫は興奮が鬱積すると完全に対象物がなくてもハンティングのような行動を示すことがある可能性も示唆されています。
完全にピカピカにした空気中にフワフワ浮かぶホコリの微粒子しかないような部屋で、ジャガーネコの行動を観察した結果ハンティング行動のような一人遊びが認められたということです。
もちろん、そのような微粒子に反応していた可能性はありますが、このような微粒子は空気に対してかなり抵抗力があるため、この猫が数メートルも追跡したスピードで動けたはずがないとPaul Leyhausen博士は著書で述べています。
そのため、何かが原因で興奮してハンティングモードになって空想上の獲物と遊んでしまったという説もあるのです。
上述のように、猫のクラッキングはハンティングに関連した様々なことが原因で起こるのではないかといわれています。
そのため、特にそのような機会が少なかったり、あまり狩猟本能が強くない個体では認められないかもしれません。
クラッキングしないからといって、特に心配する必要はありません。
もしクラッキングをどうしても見てみたいという場合は、鳥の動画や音声を流してみて観察してみるのもひとつだとは思います。
ただし、フラストレーションが原因で起こっているという説もあるので、ほどほどにしておきましょう。
また、「うちの子がクラッキングのような声を出していたんだけど、ちょっと下手くそな感じだった。クラッキングが下手なのかしら?」という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
前述のように日本でいうクラッキングには「ケケケッ」「クククッ」などの音の他にも様々なバリエーションがあります。
したがって、下手くそというよりは他のバリエーションの音声を出している可能性もあります。
その他、Fabioさんがいうようにあまり上手ではない鳴き真似でも、タマリンをおびき寄せることはできたとのことなので、上手い下手はあまり関係ないかもしれません。
猫のクラッキングについて詳しく解説しました。
普段は寝てばかりいて、まさに『寝子』なペットの猫たちにも立派な狩猟本能が根付いています。
猫はその本能に忠実に遊びが大好きなことも、大きな魅力の一つではあります。
ただし、彼らの遊びはどんなに小さな子猫でも、ハンティングで獲物を殺す訓練をしているのだということを忘れないでください。
そのため、小さい時に手にじゃれつかせて遊ばせる癖をつけてしまうと、獲物認定されてしまい問題行動につながることもあります。
猫と遊ぶ際には、必ずおもちゃを介して遊ぶ、興奮しすぎているようなら一旦クールダウンさせるなどを意識するようにしてください。
猫の遊び欲求を適切に満たしつつ、猫と上手に付き合っていくようにしましょう。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2021/02/02
公開日 : 2021/02/02