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アリは、正式にはハチ目・スズメバチ上科・アリ科に属する虫です。
「ハチ」と入っているように、実はハチの近縁種にあたり、あのミツバチよりもスズメバチに近いと言われている虫なのです。
日本でよく見られる蟻たちには針がなかったり、刺さない種類が多いですが、お尻に針がある種類の蟻は危険を感じた際に刺すことがあります。
「蟻酸(ギ酸)」と呼ばれる毒をもっている種類がいることも、ハチに近いと言われる根拠となっています。
また、蟻の巣の断面図を子供の頃に、理科の教科書などで見たことがある人も多いのではないでしょうか。
蟻は社会性昆虫の代表格で、成虫になると「女王アリ」「働きアリ」「兵隊アリ」などそれぞれ役割をもち、コロニーの中で暮らします。
その様子はまさに大家族のようで、観察しがいのある昆虫と言えるでしょう。
現在日本に生息する蟻の種類は、なんと280種類以上だと言われています。
とても細かく分けられており、全ての蟻を見ることは容易ではありません。
「同じ蟻だと思っていたら実は違う種類だった」ということもあるでしょう。
ここでは、主にわたしたちの身近でよく見られるポピュラーな蟻たちと、近年日本に来た危険な海外の蟻たちを紹介していきます。
外を歩いているとよく見かけたり、時には家の中に侵入してきたりもする身近な蟻たちを5種類紹介していきます。
蟻を見かけたらどの種類に当てはまるか、観察してみるのも面白いかもしれません。
クロオオアリは私たちの身近で観察することのできる、もっともポピュラーな蟻です。
春から秋にかけて、真っ黒な身体でコンクリートの上や野原を歩き回る姿をよく見るのではないでしょうか。
実はこの蟻は日本にいる種類の中では最も大きく、大型の働きアリの体長は10mmを超えます。
また、アブラムシを守る蟻とも言われており、アブラムシの分泌する甘い汁を貰う代わりに、テントウムシからアブラムシを守っているのです。
分類:ハチ目・アリ科・ヤマアリ亜科・オオアリ属
学名:Camponotus japonicus
生息地:日本全域、朝鮮半島、中国、アメリカ合衆国など
大きさ:働きアリ:7~12mm 女王アリ:約17mm
日本でよく見られる蟻の一種で、ちょうどクロオオアリを小さくしたような見た目をしています。
家の中で砂糖などをこぼして放置しておいたら、いつの間にか群れで現れていたという経験がある人も多いのではないでしょうか。
通常アリの巣にいる女王アリは一匹ですが、クロヤマアリは複数の女王が同じ巣の中で暮らしています。
分類:ヤマアリ亜科・クロヤマアリ属
学名:Formica japonica
生息地:日本全域、サハリン、東シベリア、中国、モンゴルなど
大きさ:働きアリ:4~6mm 女王アリ:約10mm
ムネアカオオアリはクロオオアリと同じくらいの大きさを誇る、日本最大級のアリです。
その名の通り胸部にあたる部分が赤黒く、クロオオアリとは見た目で判別ができます。
また、土の中ではなく、枯れ木や朽ち木に巣を作ることが多いです。
そのため、クロオオアリがいるような道路やコンクリートの上よりも、森の中なのように木が多い場所で見かけることが多いです。
分類:ハチ目・アリ科・オオアリ属
学名:Camponotus obscuripes
生息地:北海道、本州など日本全域
大きさ:働きアリ:8~12mm 女王アリ:16~17mm
アシナガアリは全国に分布している蟻で、東日本では平地に、西日本では平地から山地までに主に生息しています。
湿りけのある土地に巣を作る習性があり、神社などの木が生い茂った日陰や、水を含んだ畑に居ることが多いです。
また、「足長」という名前の通り、他の蟻と比べてスマートでスタイリッシュな体付きをしているのが特徴です。
分類:ハチ目・アリ科・フタフシアリ亜科
学名:Aphaenogaster famelica
生息地:日本全域、中国など
大きさ:働きアリ:4.5~8mm 女王アリ:約10mm
サムライアリは他の蟻の巣を襲って、働きアリや蛹を攫い、さらにそれを自分たちの奴隷として働かせる性質を持ったアリです。
主に狙うのはクロヤマアリの巣で、サムライアリの働きアリは奴隷を狩ること以外は一切の労働を行いません。
また、女王アリが新しい巣を作る際にも、既にあるクロヤマアリの巣に侵入し、その巣にいる女王アリを噛み殺して巣を乗っ取ることで、自分のコロニーを作ります。
身体の色は黒褐色で、大あごの形は鎌状になっているのが特徴です。
分類:ハチ目・アリ科・ヤマアリ亜科
学名:Polyergus samurai
生息地:北海道、本州、四国、九州など。西日本にもいるが、少ない。
大きさ:働きアリ:4~6mm 女王アリ:約7mm
近年話題に上っている、海外から日本にやってきた危険な種類のアリを紹介します。
毒をもっていたり、噛まれると命の危険があったりするため、見かけた際は注意しましょう。
ヒアリは主にアメリカ合衆国や中国に生息している蟻です。
「世界の侵略的外来種ワースト100」という、「本来の生息地以外に侵入した外来種で、特に生態系などへの影響が大きい生物が記載されるリスト」に選出されている生き物のひとつです。
日本では2017年5月に始めてヒアリの侵入が発見され、ニュースやメディアでも「殺人アリ」として取り上げられました。
なお、アルカロイド系の毒をもっていますが、実は刺されても死に至ることは稀で、大体は患部の痛み、かゆみ、腫れなどの症状で済みます。
しかし、体質によりアレルギー反応が起きたり、アナフィラキシーショックで死亡する場合もあるため、油断は禁物です。
分類:ハチ目・アリ科・フタフシアリ亜科
学名:Solenopsis invicta(別名:アカヒアリ)
本来の生息地:アメリカ合衆国、中国、オーストラリアなどの太平洋周辺
大きさ:働きアリ:2.5~6mm 女王アリ:約10mm
アルゼンチンアリはその名前の通り、アルゼンチン北部を中心とした南アメリカを原産地とするアリです。
日本では1993年に広島県で初めて生息が確認されて、以後生息範囲が11都道府県に広がっています。
ヒアリと同じく、「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されており、その攻撃性の高さと旺盛な繁殖力により、日本土着の蟻を駆逐してしまうほどの力をもっています。
また、毒はもっていませんが、家畜や人間にも痛みを感じるほど強く噛みつくことがあるため、見かけた際には十分注意しましょう。
分類:ハチ目・アリ科・カタアリ亜科・アルゼンチンアリ属
学名:Linepithema humile
本来の生息地:アルゼンチン北部、ウルグアイなどの南アメリカ、オーストラリア、ハワイなどにも生息
大きさ:働きアリ:約2.5mm 女王アリ:5~10mm
身近にいる蟻たちですが、飼育してみると外で見かけるのとはまた違った魅力が発見できます。
それでは、具体的に蟻を飼育するにはどうしたらよいのでしょうか。
蟻を飼育するためにまず知っておきたいことや、飼育するために必要なものなど、蟻の飼い方について解説していきます。
外で歩いている蟻を数匹捕まえてきて、飼育箱に入れれば勝手に土の中に巣を作ってくれる…そう思っている人はいませんか?
外を歩いている蟻は主に働きアリのため、捕まえてきたとしても自ら巣を作り出すことはありません。
蟻を飼育するには、まずコロニーの要となる女王アリを捕まえてくることが重要です。
女王アリは5月中旬ごろから6月初め頃にかけて、結婚飛行というオスと交尾するための行為を行います。
それが終わると地上に下りて翅を落とし、新たなコロニーを作るために歩き回ります。
その時の女王アリを見つけて捕まえるのです。
女王アリかどうかをどうやって判断するのかについては、身体の大きさで判断するのが一番です。
飼育しやすく分布も広いクロオオアリやムネアカオオアリは、働きアリが10mm前後なのに対して、女王アリは約17mmほどの大きさがあります。
具体的に蟻を飼育するために必要な道具を紹介していきます。
どれもホームセンターやペットショップ、通信販売で簡単に揃えられるものばかりなので、自分にあったものを探してみてくださいね。
蟻を飼育するためには、飼育ケースが必要になってきます。
蟻と言うとやはり巣を作るイメージがあるため、縦に長いケースに土を入れなければならない、そう思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、実は大きめのタッパーで飼育が可能なのです。
まず、中身が見えやすいよう透明な、お弁当箱くらいの大きさのタッパーを用意します。
それから中が乾燥しないように、小さく切ったスポンジを湿らせていくつか置いておきます。
そして、蓋に蟻が逃げ出さない大きさの小さい穴を開ければ完成です。
コロニーの観察がしたいという人もいるかもしれませんが、それは働きアリの数が増えてきた2~3年目から行うのがベストです。
蟻を飼い始めた1年目は、まずはこのような飼育ケースで飼うのが良いでしょう。
蟻は乾燥に弱いため、ケースに入れているスポンジは常に湿らせて置きましょう。
シリンジに水を入れれば、簡単にスポンジを湿らせることができます。
直接ケースに餌を置くとケースが汚れてしまうため、エサ皿を用意しましょう。
ペットボトルの蓋くらいの大きさの少し重みのあるエサ皿を準備し、そこに餌を入れると良いでしょう。
または、そのままペットボトルの蓋を使用しても問題ありません。
エサ皿を取り出したり、ごみを取り出したりするのにピンセットがあると便利です。
もし蟻に触れてしまった際のことを考えて、先が尖っているものではなく丸くなっているものを選びましょう。
蟻が脱走した際、手やピンセットを使って捕まえるのはなかなか大変です。
そんな時に筆が一本あれば、蟻を傷つけることなく回収することができます。
はちみつなどとろみのある餌をエサ皿に分ける際に、少しずつ掬えるため便利です。
必須ではありませんが、一本持っていると何かと役に立つでしょう。
元気な蟻を飼育するには、もちろん餌も必要です。
基本的な餌は、はちみつや黒糖、昆虫ゼリーなど手に入れやすいもので良いでしょう。
上記の餌だけでもかまいませんが、蟻を元気に大きく育てるためには、動物性たんぱく質を与えるとなお良いです。
外で餌になるような虫を捕まえてくるのは大変なため、爬虫類専門のペットショップなどで売っている、コオロギやミルワームを買ってくるのが簡単な入手方法です。
蟻が食べやすい大きさに刻んで時々与えると良いでしょう。
蟻の飼育で一番大変なのは、実は温度管理です。
外にいる生き物のため、温度管理はそれほど重要ではないのでは、そう思っている人もいるかもしれません。
しかし、蟻は実は熱さに弱い生き物なのです。
室温が30度以上になると弱ってしまうため、エアコンで蟻を飼っている部屋全体の温度管理をしましょう。
もしくはアリの飼育ケースをさらに一回り大きい発泡スチロールや保冷ケースに入れて、その中に大きめの保冷剤を入れるなどして調節しましょう。
また、アリは冬眠する生き物です。
しかし、クロオオアリやムネアカオオアリなど日本の蟻なら、室内で育てていれば殆ど冬眠することはありません。
餌の食いつきは落ちるため、時々ハチミツなどをエサ皿に垂らして与えるくらいで良いでしょう。
蟻は身近にいてポピュラーでありながら、実は奥が深い生き物です。
家族のようなコロニーを作り、まるで人間のように役割をもって生活しています。
世界中では1万種以上もいると言われている蟻たちには、まだまだたくさんの秘密が隠されているのかもしれません。
小さな身体で一生懸命働く蟻たちの姿に魅了されたら、ぜひ実際に飼育してみることをおすすめします。
野外で見ているだけでは発見できなかった、新たな蟻の魅力が見つかることでしょう。
公開日 : 2019/08/21