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「アワビを食べると猫の耳が落ちる」という言葉は、東北に古くから伝わるそうです。
猫ちゃんの耳が落ちてしまうなんて、聞いただけでぞっとしてしまいますね。
とはいえ、高価なアワビを猫ちゃんに食べさせることは、そうそうないかもしれません…。
しかし実際のところ、この言葉が意味するのはどのようなことなのでしょうか?
本当にアワビを食べてしまった猫ちゃんは、耳に何らかの症状があらわれるのでしょうか?
アワビに限らず、貝、と一言でいってもたくさんの種類があります。
調べてみた結果、どうやら猫ちゃんにとって危険な貝は、おおきく二種類に分けることができるようです。
1. アワビをはじめとするミミガイ科などの貝
2. ハマグリ、アサリ、シジミなどの二枚貝
それぞれのグループの貝がどのように危険なのでしょうか?
これだけの情報では、まだ分かりませんね。
本記事では、このグループ1と2の貝を分けて、それぞれの種類、原因、症状、対策などを詳しく見ていきます。
本ページではグループ1の貝を、2ページ目ではグループ2の貝を、3ページ目ではおまけの豆知識と、まとめの項目をご紹介致します。
それでは早速、1のグループの貝について詳しく見て、対策のための知識を身に付けましょう!
結論からいうと、グループ1の貝を食べてしまった猫は、耳に炎症をおこしてしまいます。
その貝とは、 アワビ、サザエ、トリガイ、トコブシ などです。
原因は、アワビなどの貝に含まれる毒成分、 ピロフェオホルバイドα などによるものです。
これは、アワビなどの貝が海藻を食べて、葉緑素(クロロフィル)を分解することによってうまれる成分です。
とくに春先の2月~5月にかけて、貝の中腸腺(貝の胆のような場所)にたまり、強毒化します。
この時期になると、アワビなどは中腸腺の部位が濃い色になるようです。
猫がこうした貝を食べてしまうと、ピロフェオホルバイドαが吸収され血液にとりこまれます。
実は血液にとりこまれたからといって、直接的な害とはなりません。しかしこの成分は、日光にあたることで紫外線と反応して活性化し、さまざまな炎症となってあらわれます。
血液に溶けこんだ毒成分が日光に晒されるところ…
そう、耳です!
猫は全身を毛で覆われていますから、ふつうは日光を浴びても、皮膚まで光は届きにくいです。
しかし、耳は毛が薄く、毛細血管なども透けていますから、毒成分が日光と反応することによって、細胞を破壊し、炎症を引き起こすのです。
猫にあらわれる症状は、 「光線過敏症」 というものです。
光があたることによって、猫の耳で毒成分が反応し、腫れや発疹などの皮膚炎があらわれます。
強い痒みも伴うので、猫は耳を掻きますが、ひどくなると弱った皮膚がとれたり、壊死してしまうことがあります。
これが、「アワビを食べると猫の耳が落ちる」といわれた所以です。
実はこうした症状は、人間にもあらわれることがあります。
人間の場合は耳ではなく、日光の当たりやすい顔面や手、指などに炎症が起こり、命に危険はないのですが、回復するまでに20日程度かかります。
症例はほとんどありませんが、春先にアワビなどの貝を食べるときは、食べ過ぎないように注意しましょう。
摂取量については、猫も人間も、どのくらい食べると危険なのか、はっきりしたことは分かっていません。
ですが、猫の場合は身体も小さいですから、すこしでも食べてしまったら注意が必要です。
ふつう一日程度で、症状があらわれるようです。
猫ちゃんたちを、貝(アワビ、サザエ、トリガイ、トコブシなど)の危険から守るためには、
絶対に与えない!ということがいえます。
実は、グループ1の貝は、 非加熱、加熱に関係なく猫ちゃんに作用します。
生じゃなければ大丈夫…と思って焼いたものを与えてしまっても、症状があらわれてしまうのです。
もし猫ちゃんをお飼いのご家庭で、上記のような貝を食べることがあるときは、残り物などを与えないように注意しましょう。
万が一、猫がアワビなどの貝を食べてしまった場合には、 手遅れにならないうちに、動物病院へ連れて行きましょう 。
その際、いつ何を、どのくらい食べてしまったのかを医師に伝えることで、適切な処置をしてもらえるでしょう。
グループ2の貝は、 ハマグリ、アサリ、シジミ などの二枚貝です。
グループ1の貝と比べると、食卓でよく見られる貝だといえるでしょう。
これらの貝には、ビタミンB1(チアミン)を破壊する、 チアミナーゼ という成分が含まれています。
大量に摂取してしまうと、急性ビタミンB1欠乏症を引き起こす恐れがあり、それが様々な症状となってあらわれます。
実はこれも、猫ちゃんだけでなく人間にもいえることなので、注意が必要です。
ビタミンB1には、身体の各部位のはたらきをコントロールしたり、エネルギーの生産や消費を助けたりする役割があります。
ですから、欠乏すると身体の至るところに症状があらわれます。
初期段階では、 食欲不振 、 嘔吐 などがあらわれます。
さらに症状がすすむと 瞳孔が開いたり 、神経障害による 運動失調 となり、歩き方に ふらつき があらわれます。
症状が重くなると 痙攣 をおこしたり、 異常な姿勢 をとったり、 大声で鳴きつづけたりします 。
ついには 失神 して、 昏睡状態 に陥り、命にかかわる場合もあります。
あらわれる症状: 食欲不振、嘔吐、瞳孔が開く、フラフラと歩く、痙攣、異常な姿勢、大声で鳴きつづける、失神、昏睡状態など
上記のような症状があらわれたら、チアミナーゼによる急性ビタミンB1欠乏症の可能性があります。
命にかかわることもある、危険な成分チアミナーゼですが、
予防するための対策があります。
実は、チアミナーゼは 加熱すると効力を失うのです!
チアミナーゼは上記のような貝(ハマグリ、アサリ、シジミなど)だけでなく、生の魚介類の多くに含まれています。
例えばイカやタコ、エビやカニなどの甲殻類、そのほか淡水魚などにも含まれます。
ですから、これらの食べ物を、生のまま猫ちゃんに与えることは、絶対にやめましょう!
また、加熱したからといっても、与えすぎには注意です。
イカやタコは消化にも良くないようですから、与えないのが無難でしょう。
もし誤って、猫ちゃんがこれらを生で食べてしまったときは、
様子をみて、 すぐに動物病院へ連れていく必要があります 。
少量の場合は、影響のない猫ちゃんも中にはいるようですが、
絶対に確実、ということはありませんので、すこしでも不安がある場合は病院に連れていき、
いつ何を、どのくらい食べてしまったのか、を医師に伝えましょう。
今まで危険な貝を見てきましたが、
果たして猫にとって安全な貝とはあるのでしょうか?
グループ2の貝は加熱すれば安全になるということでしたが、
猫に食べさせることが勧められているわけではありません。
それでも、貝には猫に必要な栄養素であるタウリンが豊富に含まれているので、ついついあげたくなってしまう人もいるかもしれません。
そこで、色々な貝について調べた結果、キャットフードにもよく使われ、猫が食べても良いとされている貝があることが分かりました。
その貝というのが…
猫ちゃんはホタテの香りも味も大好きで、ホタテの使われたキャットフードも喜んで食べるようです。
しかし、 注意 することがあります。
ホタテが安全といっても、 もちろん生ではいけません 。
食べる部位も、 貝柱だけです 。
ホタテはグループ2の貝に該当しますから、内臓の部分を食べてしまうと、チアミナーゼによる症状がでるかもしれません。
また、 干物 はミネラルや栄養分が高濃度なため、与えるのは危険です。
もちろん食べ過ぎにも注意です。大量摂取は、猫ちゃんの身体に負担をかけてしまいます。
とはいえ、ホタテにはタウリンが多く含まれているほか、
グリコーゲン、コハク酸、グルタミン酸などの猫ちゃんに嬉しい栄養素が豊富です。
ホタテの注意点: 加熱する、貝柱だけを与える、干物は与えない、与え過ぎない(一日ひとつ程度)
上記の点に気を付けて猫ちゃんに食べさせれば、滋養の高い食事となりそうで良いですね。
最後に、猫ちゃんと貝の関係をおさらいする、簡単なまとめを見ていきましょう!
種類: アワビ、トリガイ、サザエ、トコブシなど
原因: 貝の中腸線に含まれるピロフェオホルバイドαなどの毒成分によるもの
症状: 「光線過敏症」により、猫の耳に皮膚炎や痒みが生じる。場合によっては壊死も
予防と対策: くわしい摂取量は分かっていない。症状があらわれるのは一日程度。非加熱、加熱に関係なく作用するため、絶対に与えない
種類: ハマグリ、アサリ、シジミなど
原因: 貝に含まれるチアミナーゼという成分が、ビタミンB1を破壊することによるもの。この成分はイカやタコ、カニやエビなどの甲殻類、淡水魚など魚介類全般に含まれている
症状: 「急性ビタミンB1欠乏症」により、食欲不振、嘔吐、瞳孔が開く、フラフラと歩く、痙攣、異常な姿勢、大声で鳴きつづける、失神、昏睡状態などがあらわれる
予防と対策: チアミナーゼは加熱すれば効力を失うため、生のものを与えない。また、加熱しても大量に食べると危険となるので、基本的には与えない方が良い
グループ①と②の対処方法: すぐに動物病院へ連れて行き、医師に、いつ何を、どれだけ食べてしまったのか伝える
これで皆さんにも、猫ちゃんにとって危険な貝の種類や原因などが、お分かりいただけたかと思います。
猫ちゃんにとって危険な食べ物は多くありますが、
飼い主さんが愛猫の食生活に気を付けることで、危険を避けることができるでしょう。
大切な猫ちゃんをいつまでも可愛がってあげてくださいね。
公開日 : 2016/05/15