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猫が爪とぎをするにはいくつか理由があります。
これは「猫の爪とぎ」と聞いて、皆さんがまずイメージする理由だと思います。
古くなった爪を引っかくことで除去するというもので、自分を身綺麗にするグルーミング行動の一環です。
爪で引っかき跡を残すことは、視覚的なマーキング行動だと言われ、ネコ科の動物やクマなどで見られます。
また、引っかくときに肢の皮脂腺から出る匂いを付ける、嗅覚的なマーキングの意味も持っていると言われています。
猫が引っかくという行為は、爪の手入れやマーキングなど日常的な行動のほかにも、ストレスを感じたことにより行うことがあります。
狭いところに閉じ込められていることなどによるストレスを、「爪とぎ」という行動に転嫁している場合や、その場所から逃げようとしている場合などに見られることがあります。
買ったばかりのソファーや大切な家具など、「よりによってどうしてそこで爪とぎを…」と、やって欲しくないところで爪とぎをされてしまった経験がある方は多いのではないでしょうか。
でも、その爪とぎにも猫なりの理由があるのです。
特に多頭飼いの場合、自分のテリトリーを示すためのマーキング行動として爪とぎをすることがあります。
猫のために用意した爪とぎ用の柱や板よりも、家具などの方が引っかく場所として好まれてしまうことがあります。
猫が普段いる部屋が限られており、自由に行き来出来ない場合、そこから出ようとして爪とぎのような行動を取ることがあります。
また、ストレスを感じている場合、それを紛らわせようとして爪とぎのような行動をしていることも考えられます。
いくら理由があったとしても、新しい家具などを引っかかれてしまうのは出来れば避けたいことですよね。
猫をしつけるのは難しいので、周りの環境を変えることで、家具など不適切なものでの爪とぎをやめさせることを目指した方が賢明です。
ここでは、具体的な対処方法に入る前に、飼い主が把握すべきことについてお話します。
困った爪とぎを解決するためには、少し面倒でも普段の生活を振り返ってみることが大切です。
闇雲に「そこで爪とぎをするのはやめなさい」と言ったところで、猫が爪とぎをやめてくれることはありません。
まずは、どのようなときに「やってほしくない爪とぎ」をするのか冷静に分析しましょう。
一つずつ猫の行動や飼育環境を振り返ってみることで、爪とぎの問題解決の糸口が見つかるかもしれません。
現在、爪とぎで一番困っていることはなんですか?
爪とぎしてしまうものの素材や場所、設置面が水平か垂直かなど細かいところまで見てみましょう。
そして、現在使用している猫用爪とぎと比較してみます。
爪とぎ柱や板の材質は猫が引っかいて困る場所と比べてどうでしょうか。
設置場所や設置面、大きさなど猫の好みとずれているところはありませんか?
多頭飼いの場合は、個々の猫の好みを確認します。
猫の好みを詳しく把握することで、代替出来る爪とぎ用の物が見つかるかもしれません。
やらないで欲しい場所で爪とぎをするようになった経緯を思い出してみましょう。
「新しい家具を買ったら、急にそれで爪とぎをするようになった」「新しい猫をむかえてから、爪とぎが増えた」など、好きな材質のものが目の前にやってきたり、新しい猫がやってきたりするなど、環境が変化したことがきっかけとなることがあります。
また、「以前は古い家具を使っていたから引っかいても気にしなかったけれど、新しい家具を買ったから、それで爪とぎされては困る」など飼い主の意志の変化かもしれません。
猫の爪とぎは、本来、古い爪を落とし、爪を尖らせておくためのもので、爪を短くするものではありません。
爪を短く切っておくことで、不適切な場所での爪とぎを直接的に防げるわけではありませんが、家具への傷を最小限にすることが出来ます。
また、あまり爪が伸びているとカーペットなどに引っかかり、猫自身が怪我をする原因にもなります。
飼い主や同居猫への怪我を防ぐ意味でも普段から爪を短く切っておくことは大切です。
猫をしつけるのは難しいものです。
猫を叱ることで、一瞬爪とぎをやめたとしても、それは飼い主がいるときに爪とぎをしなくなるだけで、ほとんど効果がありません。
爪とぎは、猫にとってグルーミングやマーキングなどの正常な行動であり、爪を研ぐこと自体をやめさせるのはまず無理だと思った方が良いでしょう。
しかし、やってほしくない場所での爪とぎをやめさせる方法はあります。
猫をしつけようとせずに猫の周りの環境を操作することが成功させるポイントです。
まずは、現在引っかかれて困る物を猫から遠ざけましょう。
そうは言っても、重たい家具などを動かすことは現実的ではないですよね。
そこで、置いてある家具などを動かすことなく、猫を遠ざける方法をご紹介します。
これらを試しながら、その後にご紹介する方法で「お気に入りの爪とぎ」を見つけてみてください。
猫にあまりストレスを与えずに、不適切な場所での爪とぎを減らすことが出来ますよ。
まずは、とにかくその場所を引っかくという行為をやめさせます。
しばらく「いつもの爪とぎの場所」がなくなることで、猫はほかの場所を探し始めます。
特によく爪とぎをしていた部分には、両面テープを貼るなど猫が嫌がるものを置くことでより遠ざけることが出来ます。
猫の嫌がるものとして、「猫が嫌がる臭いが出るスプレー」なども市販されています。
爪とぎして欲しくない物から猫を遠ざけるために有効なこともありますが、使用方法を誤ると猫に恐怖を与えてしまい、スプレーを使用した飼い主を噛むなど攻撃行動に繋がってしまうこともあります。
使用する際には猫に直接かからないように、家具など物に噴霧する程度にとどめましょう。
これは、家具への爪とぎがマーキング行動である場合に有効な方法です。
普段頭をこすり付けてる布などを、引っかいて困る家具のすぐ近くに置きます。
猫は爪とぎだけではなく、頭をこすり付けることによってマーキングをします。
こすり付けによるマーキングをしやすいものを近くに置くことで、爪とぎの行動を減らすことが出来ます。
日常的にあまり頭をこすり付ける動作をしない猫でも、ブラシなどを壁にかけることで、こすり付けのマーキングをするようになることもあります。
ソファーなど布が張ってある家具を買い替える場合には、古い家具から一部布を切り取り、それを猫用の爪とぎ柱に貼り付けます。
これを新しい家具の近くに置くことで、新しい家具に対する爪とぎを防止出来ることがあります。
引っかいて欲しくない対象物から猫を遠ざけることと並行して行っていただきたいのが、「お気に入りの爪とぎ」を見つけることです。
猫用の爪とぎは、素材だけでなく設置場所や大きさ、設置方法にもポイントがあります。
素材については猫の好みが分かれるところです。
細かく編んだ丈夫な布が好きな猫もいれば、引っかいて引っ張ることが出来るくらいの緩く編んだ布を好む猫もいます。
また、柔らかい木や段ボールが好きな猫もいます。
今まで「爪とぎをしてしまって困る」と思っていたものに近いものを用意すると良いかもしれません。
爪とぎには、視覚的なマーキングの意味もあるので、爪とぎ跡がなるべく残るものを選ぶことも大切です。
一般的に、猫は寝起きに最も引っかき行動をすると言われています。
長時間過ごすお気に入りの場所にマーキングするために爪とぎをすることも多いようです。
よく爪とぎをする場所、もしくは寝る場所の近くに設置するのが良いでしょう。
爪とぎはマーキング行動も兼ねていることから、目立つ場所が好まれる傾向があります。
爪とぎ柱の場合、猫は体を伸ばした状態で爪とぎをします。
そのため、30cm以上のものを選びましょう。
爪とぎ板の場合、設置角度も重要です。
水平が良いのか垂直が良いのか、普段の爪とぎの様子を見て、猫の好みに合わせて設置しましょう。
固定する必要があるものは、使用するときに倒れることがないように、設置する際はしっかり確認してください。
いざ気に入りそうな爪とぎを用意しても、初めは警戒して近寄らなかったり、興味を示してくれなかったりするかもしれません。
意図的に慣れさせることで、その爪とぎを気に入れば、そのほかの場所での爪とぎを減らすことが出来ます。
爪とぎ柱や爪とぎ板にまたたびをふりかけ、猫の興味を向けさせます。
そうすることによって、爪とぎの使用を促すことが出来ます。
爪とぎの周辺で遊ばせることにより、その後くつろぎ始めたときに爪とぎをする可能性が高くなります。
爪とぎに近づいたときや引っかいたときにおやつを与えます。
爪とぎとご褒美が結びつくことで、爪とぎへの警戒心が薄れ、新しい爪とぎを使うようになります。
多頭飼いを始めたときや引越しなど、生活の変化が生じたのを機にやって欲しくない場所での爪とぎが始まった場合は、遊びや食餌、トイレなど猫に関わる生活全般を見直した方が良いこともあります。
充分に遊ぶ時間や落ち着いて食餌が出来る場所などは確保出来ていますか?
トイレは頭数プラス一つ用意されていますか?
これらの環境を整えることで、猫の満足感が上がり、必要以上にマーキングをしなくなることで、爪とぎ行動が減るかもしれません。
猫がなぜ爪とぎをするのかという理由から、やって欲しくない場所での爪とぎを防ぐ方法などをお伝えしてきました。
猫の爪とぎは猫にとって自然な行動なので、それ自体をやめさせることは出来ず、しつけも難しいですが、猫の周りの環境に少し気を配ることで、不適切な場所での爪とぎをやめさせることは可能です。
猫と飼い主がお互いにストレスを感じず快適に過ごせるように、愛猫の「お気に入りの爪とぎ」を見つけてみてください。
執筆・監修:獣医師 近藤 菜津紀(こんどう なつき)
原因不明の難病に20年以上苦しみながらも、酪農学園大学獣医学科を卒業後、獣医師免許を取得。
小動物臨床や、動物の心理学である動物行動学を用いたカウンセリング、畜場での肉の検査(公務員)など様々な経験を経て、現在は書籍の執筆や講演活動などを行なっている。
車椅子生活をしながら活動する、日本で唯一の「寝ながら獣医師」。
最終更新日 : 2021/01/18
公開日 : 2021/01/18