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どうしても犬が伏せをしないとき、伏せの仕方が変なときに考えられること
犬が伏せの姿勢を取る意味はいくつかあります。
犬がベターっと床に伏せているときは、座っているときに比べてリラックスしていると思って良いでしょう。
これは、座っているときよりも伏せている方が立ちにくい姿勢だからです。
つまり、犬が伏せているときは「敵が来ない、ここは安全だ」と安心しているのです。
カーミングシグナルと呼ばれるもので、自分を落ち着かせようと伏せの体勢をとることがあるようです。
外で走っていたのに、急に伏せの姿勢をとったときは、興奮し過ぎた自分を落ち着かせようとしているのかもしれません。
退屈なとき、伏せをすることがあります。
飼い主に怒られたときなど、一見反省しているように見えますが、思うように遊べなかったり、欲求が満たされなかったりして拗ねているのです。
犬の伏せには色々な意味があることがお分かりいただけたと思います。
それでは、訓練で伏せを教えるのは何故でしょうか。
犬に伏せを教えるメリットは主に2つあります。
座った姿勢に比べ、伏せの状態から立ち上がるまでには時間がかかります。
特に飛びつき癖のある犬の場合、急に立ち上がらないようにすることで、来客に飛びかかることを防ぐことが出来ます。
「伏せの意味」でお話した通り、犬の伏せは自分を落ち着かせるカーミングシグナルの一つです。
これを飼い主からのコマンドとして行うことで、犬の興奮を鎮めることが出来ます。
散歩のときに、猫など他の動物やバイクなどの乗り物に興奮してしまう犬でも、伏せをさせることで落ち着かせることが出来ます。
犬に伏せを教える方法について解説します。
訓練に入る前に押さえておいた方が良いポイントについてもお話します。
「伏せ」を教えるまでに、いくつか注意していただきたいポイントがあります。
訓練というと、何度も徹底して、完璧に出来るまで頑張ってしまう方もいらっしゃいますが、犬が集中出来る時間は5〜10分程度です。
一度に沢山訓練するよりも、毎日集中出来る時間の範囲内で、犬にやる気があるときに行うのがポイントです。
家の中で訓練するときも、リードをつけた方が、犬がウロウロしてしまうことがなく飼い主に注目しやすいため、短期間でコマンドを入れることが出来ます。
首輪は指が1本入るくらいにします。
「家の中だから窮屈だろう」と緩めにつけてしまうと、首輪が擦れたり、リードを引いたときに首の毛が引っ張られたりして、逆に犬の負担になってしまうことがあります。
犬の注意を引くために、名前に反応するようにしておくことは重要です。
犬の名前を呼んでみて反応が薄い場合は、普段から何でもないときに呼び過ぎかもしれません。
名前を呼ぶのは、犬に注意を向かせたいときだけにし、飼い主の方を向いてくれたら褒めたり、おやつをあげたりするなど「ご褒美」を忘れないようにしましょう。
犬が落ち着いているときを見計らって、伏せのしつけを始めましょう。
はじめのうちは、食べ物を使って訓練することになるので、フードの量を調整してください。
1日分のフードを小分けにし、訓練のご褒美とすると、健康的にトレーニング出来ますよ。
鼻の上から下に向かってフードを持っていきます。
犬が伏せの姿勢になる直前に「伏せ」と声をかけます。
伏せたら「グッド」「いい子」など褒め言葉をかけてからフードを与えます。
すぐに立ち上がらないようにするためには、肘が地面につくまで伏せをさせてから褒めるようにすると良いでしょう。
前脚の間からフードを押し込みます。
こうすると、犬は自然と伏せの姿勢をとります。
あとは、座った状態からの伏せと同じように伏せる直前に「伏せ」と声かけをし、伏せたら褒めてフードを与えます。
伏せをしつけるときは、初めが肝心です。
短時間でメリハリのある訓練をすることで、きちんと犬が飼い主の言葉に従うようになります。
伏せの訓練は短い時間で良いので、フードなしでも出来るようになるまで毎日行いましょう。
訓練するときは、なるべく時間をあけずに5回くらい繰り返します。
こうすることで、犬も飽きずに続けられるため失敗も少なく、伏せをすることを定着させることが出来ます。
「犬がうまく伏せをせずウロウロしてしまった」「伏せをしようとしたけれど、直前で立ち上がってしまった」など上手く伏せが出来なかった場合は、フードは与えず、リードを短く持って犬が落ち着くのを待ち、もう一度行います。
このとき、犬を励ましたり、叱ったりなど言葉をかけてはいけません。
この声掛けが「ご褒美」になってしまうことがあるためです。
伏せをしなかったにもかかわらず、飼い主にかまってもらったと思った犬は、伏せをする必要性を感じなくなってしまいます。
訓練中はなるべく余計なことは言わず、褒めるときだけ言葉をかけるようにしましょう。
また、犬が伏せをしないからと言って諦めてはいけません。
5回繰り返した方が良いとお伝えしましたが、難しい場合は1回でも構いません。
「伏せというコマンドを出しても、出来るときと出来ないときがある」ということでは、肝心なときに従わせることが出来ません。
それよりも、「1回のコマンドで成功させる」ことを大切にしましょう。
周りのにおいを嗅ぐなど、他のことをやり始めたときは犬の集中力が切れています。
こういったときにいくら言うことを聞かせようとしても難しいものです。
犬が落ち着いているときを見計らって訓練を始め、「もう少し出来るかも」というくらいでやめておきましょう。
訓練は落ち着いているときに行うのがベストですが、普段の散歩中など興奮しているときにコマンドに従うことが出来たときには、大袈裟なくらい褒めましょう。
犬は「伏せ」というコマンドと「褒められる」というご褒美が結びつくほどきちんと伏せをするようになります。
最初はフードやおやつをご褒美にしますが、訓練を続けるうちに、伏せをすることで飼い主が喜ぶということを犬が学習します。
すると、褒めることそのものが犬にとってご褒美になります。
最終的には「伏せ」というコマンドと「褒める」というご褒美だけで伏せを出来るようにしましょう。
「外だと伏せをしない」など特定の場面で伏せを嫌がるときには、どうすれば良いのでしょうか。
また「今まで出来ていたのに、急に伏せをしなくなった」という場合には、病気の可能性があります。
ここでは、伏せを嫌がったり、伏せの仕方が不自然なときに考えられることを見ていきましょう。
家の外や知らない場所、知らない人がいるときなど特定の場面で伏せを嫌がるときは、その場所や人に対して警戒心を持っているのかもしれません。
犬にとって立つまでに時間のかかる伏せは、リラックスしているときにするものであり、警戒しなけらばならないときの伏せはとても怖いことなのです。
こういった場合、無理に押さえつけたり、叱ったりしてしまうと犬が余計不安になり、いつも出来ているところでも伏せをしなくなってしまうことがあります。
無理に従わせようとせず、その場所や人に慣れさせることから始めましょう。
伏せをするのを急に嫌がるようになったときに考えられるのは、肢など体の痛みです。
触ると嫌がるところはありませんか?
他に気になる症状はありませんか?
様子がいつもと違うときには、早めに動物病院を受診しましょう。
伏せの姿勢を取るとき、後ろ脚を投げ出すような「お姉さん座り(横座り)」をするという場合には、股関節形成不全の可能性があります。
腰を振って歩く、痛がる、ウサギのように後ろ肢を同時に蹴って進む、動きにくそうにするなどの症状が見られる場合には、動物病院に相談した方が良いでしょう。
伏せの姿勢で両方の後ろ肢を投げ出す「カエルポーズ」をする犬もいます。
変わった座り方に「病気では?」と心配になってしまうかもしれませんが、特に問題ない場合がほとんどです。
「カエルポーズ」をする理由は、フローリングなど滑りやすい床の上で伏せた姿勢を取る際に楽だからだと考えられます。
また、「カエルポーズ」は、肢の短いコーギーやダックスフンド、フレンチブルドッグなどに多い伏せの姿勢ですが、これも、肢の短い犬にとっては肢を曲げて伏せをするより投げ出した姿勢の方が楽なのでしょう。
「カエルポーズ」は、肢の裏を地面につけた状態の伏せより、更に立ち上がりにくい姿勢であり、とてもリラックスした状態だとも言えます。
ただし、稀に関節や神経の疾患で「カエルポーズ」が見られることもあるので、痛がっていたり、歩き方が変だったり何か気になることがある場合は、動物病院を受診しましょう。
「カエルポーズ」をすること自体は問題ありませんが、床が滑りやすい場合には、犬の肢に負担がかかっていることもあります。
階段など滑ると危険なところには滑り止めのマットを敷く、肢の毛は短く切っておくなど対策が必要かもしれません。
犬が伏せをする意味や伏せを教えることのメリット、伏せの教え方、伏せをしないときに考えられることなどをご紹介しました。
普段から落ち着ける飼育環境を整えることで、犬も安心して暮らすことが出来ますし、飼い主も訓練しやすくなります。
また、伏せを教えることで、散歩中など外でも安全に過ごすことができ、犬同士のトラブルなども防ぐことが出来ます。
忙しい毎日でも、ほんの少しだけ訓練の時間を取ることで、犬も飼い主も安全で快適に過ごすことが出来るようになります。
楽しみながら訓練を続けましょう。
執筆・監修:獣医師 近藤 菜津紀(こんどう なつき)
原因不明の難病に20年以上苦しみながらも、酪農学園大学獣医学科を卒業後、獣医師免許を取得。
小動物臨床や、動物の心理学である動物行動学を用いたカウンセリング、畜場での肉の検査(公務員)など様々な経験を経て、現在は書籍の執筆や講演活動などを行なっている。
車椅子生活をしながら活動する、日本で唯一の「寝ながら獣医師」。
最終更新日 : 2021/01/04
公開日 : 2021/01/04