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【獣医師が解説】猫にアロマはダメ?安全?中毒症状や死亡例は?






アロマキャンドルをはじめ、アロマを日常に取り入れてる方もいるのではないでしょうか。

実は、アロマオイル(精油)はネコにとって中毒症状を起こす可能性があるのです。

「アロマは自然のものだし、むしろ安全で身体に良いんじゃないの?」と思う方もいると思います。
実際にペット用品にも、アロマ成分が含まれているものを見かける機会もありますよね。

過去には、精油の成分の入ったシャンプーが原因の可能性がある、猫の死亡事故も報告されています。

今回はネコを飼っていたら注意が必要なアロマの利用についてご紹介します。

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【目次】【獣医師が解説】猫にアロマはダメ?安全?中毒症状や死亡例は?

 

猫にアロマセラピーはダメ?安全?

猫にアロマオイル(精油)が危険かもしれない理由

薬物や精油代謝の特異性

猫の赤血球は傷つきやすい

猫の皮膚はとっても薄い

猫は毛づくろいを頻繁に行う

猫のアロマオイル(精油)中毒症状は?

猫のアロマオイル(精油)による中毒報告や死亡例は?

猫に特に危険なアロマオイル(精油)はあるの?

アロマセラピーで使用されることが多い精油の中で、特に猫に危険といわれている精油

猫にアロマオイル(精油)、加湿器なら大丈夫?アロマキャンドルは?

猫との生活で気を付けること

 

 

猫にアロマセラピーはダメ?安全?

 

花と猫

 

そもそも、アロマセラピーとはどのようなものを指すのでしょうか。

 

精油 と呼ばれる ”脂溶性である程度の揮発性を有する芳香のある化学物質の濃縮物” を用いて、 心身の健康や美容を増進する技術や行為 のことです。

また広義では、芳香をもつ植物の成分をマッサージや様々な療法・生活に利用することも含めます。

 

日本では、アロマオイルを用いたマッサージ、自宅で芳香浴やファブリックスプレーを使用することで、アロマセラピーと関わる機会が多いのではないでしょうか。

 

また、アニマルアロマセラピーという動物に対するアロマセラピーも行われています。

ただし、特に猫はアロマオイルの使用に対して注意が必要です。

 

 

猫にアロマオイル(精油)が危険かもしれない理由

 

3匹の猫と花

 

猫はその特性から、精油に対しての危険性が他の動物より高いといわれています。

 

薬物や精油代謝の特異性

 

黄色い花と三毛猫

 

猫は、肝臓の解毒機構のひとつであるグルクロン酸抱合能力が弱いということがわかっています。

つまり、 猫は薬剤や精油などの脂溶性物質を水溶性にして体外に排出する能力が弱い ということです。

他の動物に比較すると、6分の1〜10分の1以下ともいわれています。

 

さらに、肝臓のある代謝酵素においては、特にオス猫に比べてメス猫の活性が5分の1程度であるという報告もあります。

メス猫の方が精油に対してリスクが高い可能性 があるということです。

 

また、多くのネコ類で肝臓の代謝酵素の生成に関わる遺伝子にも、変異が認められています。

この特性は、猫が人や犬と違い肉食動物であり、植物が作り出す化学物質を代謝する必要がなかったことに起因するのかもしれません。

 

以上のように様々な要因で、 猫は他の動物に比べて肝臓での解毒能力が劣っているの です。

このことから、 アロマオイルだけでなく通常の獣医療の範囲でも、猫に対しては使用に注意が必要な薬剤もある のです。

 

猫の赤血球は傷つきやすい

 

花をかぐ猫

 

血液中の細胞成分である赤血球。

酸素を運搬するなど、動物が生きていくうえで重要な役目を担っています。

 

この赤血球が中毒物質の摂取など様々な要因で変性してしまうと、その傷ついた赤血球は体内で破壊されてしまうのです。

特に 猫では赤血球が他の動物に比べて傷つきやすい ため、中毒症状を発症しやすいと考えられています。

 

犬に比べて、猫がネギ中毒を起こしやすいのもこのことが理由です。

 

猫の皮膚はとっても薄い

 

花と黒猫

 

猫の皮膚は 他の哺乳類と比較しても とても薄く、化学物質が吸収されやすい といわれています。

実は、猫の皮膚は人間と比較すると半分〜3分の1程度の厚さしかないのです。

 

猫は毛づくろいを頻繁に行う

 

毛づくろい中の猫

 

猫はとてもきれい好きな動物です。

 

起きている時間のほとんどを毛づくろいに費やしている子もいるほどです。

そのため、被毛に付着したものを 毛づくろいしているときに、舐め取って口から成分を摂取してしまう可能性が高い です。

 

このことからも、一般的なペットの動物に比べて、猫のアロマセラピーに関する危険性は高いと言われています。

 

 

猫のアロマオイル(精油)中毒症状は?

 

青い花と猫

 

現在報告されている、精油に関連すると思われる中毒症状は多岐に渡ります。

症状が重度だと、肝不全を起こしてしまうこともあります。

 

どの症状が出るかは、摂取経路にも関係してきますが、 皮膚の炎症、目の赤み、嘔吐、食欲廃絶、下痢、ふらつき、ふるえ、低体温、ぐったりする 攻撃行動、よだれ などの症状が表れる可能性があります。

 

ティーツリーオイルの中毒報告によると、摂取後数時間〜24時間で症状が表れることが多いようです。

 

また、排出されずに体内に蓄積してしまうこともあります。

症状が出ていなくても、日常的な使用で気付かぬうちに肝臓にダメージを与えていることもあるのです。

 

肝臓は弱っていてもすぐに症状は出ないため、肝機能が低下して目に見える症状が出たときには重症になっていることが多いです。

 

 

猫のアロマオイル(精油)による中毒報告や死亡例は?

 

花と猫の後ろ姿

 

猫の精油による中毒報告は多くあります。

ただし、精油による中毒であると確定することは難しいため、それよりも精油により中毒症状を起こした猫や、体調不良を起こしている猫がいる可能性はあります。

 

1998年に、100%ティーツリーオイル含有のノミ忌避剤を皮膚に60ml直接塗布されたアンゴラ種の猫3頭に関する報告があります。

 

重度のノミ寄生により毛刈りをされていましたが、毛刈りによる皮膚の傷はなく、ノミの噛み傷は肉眼で確認できたそうです。

傷があったことにより、精油の体内への浸透がスムーズに起こってしまった可能性はあります。

 

塗布後、5時間以内に一匹がふらつきと低体温で立つこともできなくなり、残り二匹もその日のうちに重度の低体温症と脱水症を伴う昏睡を起こしました。

全頭とも輸液などの治療を受けましたが、そのうち1頭が治療の甲斐なく死亡しています。

 

他にも水とティーツリーオイルの混ぜた液をノミよけとしてスプレーされた8ヶ月齢のチンチラの報告もあります。

スプレー後に呼吸困難、卒倒、腹痛、皮膚炎、沈うつ状態に陥り、最終的に死亡しています。

 

2002年に、虫除け目的でリモネン含有シャンプーを使用された2歳の猫の死亡報告もあります。

この製品は、6週齢以上の犬猫への使用が可能という表記があったそうです。

 

また、ASPCAというアメリカの動物保護団体の動物中毒コントロールセンターの過去のデータを検証した報告があります。

2002年から2012年の10年間で、337匹の犬と106匹の猫でティーツリーオイルの中毒報告があったそうです。

 

ほとんどの症例で使用は意図的に行われていました。

ティーツリーオイルは皮膚や経口から摂取され、症状としてはよだれや震えふらつきなどが多く認められています。

 

同団体の研究で、2006年から2008年の2年間に精油の成分を含むノミ忌避剤の副作用についての研究報告があります。

 

製品を使用した39匹の猫と9匹の犬のうち92%の動物で、有害作用が確認されたとのことです。

症状として、猫では興奮と唾液過多、犬では嘔吐と無気力が最も多く認められました。

 

77%の動物で製品の指示通りに使用していたこともわかっており、このような製品では指示通りに使用しても有害反応が起こる可能性があるとASPCAは報告しています。

 

 

猫に特に危険なアロマオイル(精油)はあるの?

 

アロマオイル

 

猫に対してはどの精油も危険性があるのでしょうか。

 

高濃度で使用した場合、どんな精油でも毒性があるといわれています

特に猫に毒性が高い成分を含んでる可能性があるので、 レモンの香り、森の香りには気を付けて おくようにしましょう。

 

アロマセラピーで使用されることが多い精油の中で、特に猫に危険といわれている精油

 

代謝の関係から特に猫に危険だと考えられている精油を紹介します。

 

モノテルペン炭化水素類とくにピネン、リモネンを多く含む精油

 

  • レモン(Citrus limon)
  • オレンジ(Citrus sinensis)
  • タンジェリン(Citrus reticulate)
  • マンダリン(Citrus reticulate)
  • グレープフルーツ(Citrus paradise)
  • ライム(Citrus aurantifolia)
  • ベルガモット(Citrus bergamia)
  • パイン(Pinus sylvestris)
  • スプルース(Picea mariana)
  • ファー(Abies balsamea)
  • ペパーミント(Mentha piperita)

 

フェノール類を多く含む精油

 

  • オレガノ(Origanum vulgare)
  • タイム(Tymus vulgaris)
  • クローブ(Syzygium aromaticum)
  • サマーセイボリー(Satureia hortensis)
  • ウインターセイボリー(Satureis montana)
  • カシア(Cinnamomum cassia)

 

※その他にもリナロールやメントールを含む精油も危険なので注意が必要です。

 

 

猫にアロマオイル(精油)、加湿器なら大丈夫?アロマキャンドルは?

 

赤い花と猫

 

アロマ商品を生活に取り入れてる方は多いのではないでしょうか。

 

芳香浴程度であればリスクは低いという方もいますが、個人的には避けた方が良いと思います。

猫への治療として専門の獣医師監督のもと行うのであればともかく、個人の判断で日常的に猫のいる空間で使用することはリスクが高い可能性があります。

 

精油が体に取り込まれる経路として、ニオイを嗅ぐ、皮膚から吸収、経口的に摂取するなどが考えられます。

猫は被毛についた精油の分子を舐め取る可能性もあり、空間に拡散している場合でも注意が必要です。

 

また、精油の分子が脳を化学的に刺激し神経伝達される経路と、呼吸により肺、口や鼻の粘膜、皮膚から直接体内に精油の分子が取り込まれる経路があります。

そのため、空間にニオイが漂ってるだけでも生体に影響を与える可能性は十分にあるのです。

 

芳香浴を行う場合は、基本的に猫のいない空間で行いましょう。

 

 

猫との生活で気を付けること

 

花をかぶる猫

 

猫に直接精油を使用することがなくても、危険 はあります。

例えば、アロマオイルを入浴時に使用した場合、猫はためてあるお湯を好んで舐めることも多いです。

猫をお風呂場に入れないように注意しましょう。

 

また、アロマ成分の入った乳液やクリームも猫はよく舐めとってきます。

アロマオイルでマッサージを行った皮膚も、普段よりもなめてしまう可能性があります。

 

猫が人間をなめるのは愛情の証、不思議なニオイに反応をしてとってあげようとしてなめる、油分に反応してなめるなど諸説あります。

なめることで猫の体内に精油の成分が取り込まれてしまう可能性があるため、使用後は出来る限りなめられないように注意してください。

 

また、ペット用品で猫も使用可能という表示があるものの中に、アロマ成分を含有していることもあります。

低濃度であれば安全に使用できる可能性もありますが、使用前に猫に対する安全性に関しての根拠を問い合わせてみるとより安心です。

 

犬と猫、両方飼育している方は、 犬専用の商品を猫に使わないように気を付けましょう。

猫にとって危険性のある物質が含まれている可能性があります。

 

 

気軽にどこでも手に入るアロマのエッセンシャルオイル。

雑貨のような感覚で気軽に使用している方も多いと思います。

しかし、アロマオイルにより猫が中毒を起こしてしまう可能性もあるのです。

 

基本的に猫はニオイのきついものを嫌う傾向にあります。

また、近年では人間の生活においても、ニオイのきつい柔軟剤や洗剤などに起因した香害による健康被害が問題になっています。

 

猫と人間双方にとって健康な生活を送るためにも、暮らしの中でのアロマオイルを含め、香料の使用に関して今一度考えてみることがおすすめです。

 

 

執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ

 

大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。

その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。

 

再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。

海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。

 

現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。


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