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犬の十戒とは、犬の立場から人間にお願いしたい10の願い事が書かれている詩です。
この詩は世界各国の言葉に翻訳されて、多くの人々に読まれています。
日本でも、犬の十戒をもとにした多くの書籍や映画が発表されています。
この詩は作者不明と言われることもあれば、ノルウェーのブリーダーであるMerit Teigenさんが犬の買い手に渡す約束の紙「犬からご主人への11のお願い」をもとにしているという説もあります。
また、イギリスのドッグトレーナーのStan Rawlinsonさんが、1993年に自身が書いたとホームページで紹介しています。
こちらは英語での記載になりますが、インターネットで検索すると様々な方が日本語に翻訳したものを見つけることができます。
原文が気になる方は、Stanさんのホームページをぜひ検索してみてください。
犬を飼おうと考えてる方には、一度は読んでいただきたい心に響く内容です。
それでは、「The Ten Commandments of Dog Ownership(犬の十戒)」を和訳したものをご紹介します。
私の一生は、10年〜15年くらいしかありません。
あなたと離れることは、私にとってなによりも辛いことなのです。
私と一緒に暮らし始める前に、どうかそのことを考えてください。
獣医療の進歩で犬の寿命が延びたとはいえ、 平均寿命は15年ほど です。
犬たちは人間とは違う速度で時を過ごしています。
犬の大人になってからの 1年は人間に換算すると、小型犬で約4年、大型犬で約7年 ともいわれています。
つまり、人間の1時間は犬にとって4〜7時間にもなるのです。
そのことを意識して、愛犬と過ごす時間を大切にしましょう。
あなたが私に何をしてほしいのか理解するまでに少し時間をください。
私がうまくできなくてもイライラしたり、短気を起こしたりせず、忍耐強く待ってくれると嬉しいです。
犬は人間の言葉を話すことができません。
また、人間も犬の言葉を話すことができません。
だからこそ、ゆっくりと時間をかけてお互いにわかり合っていくことが重要なのです。
「この時期にこんなこともできないのは大丈夫なのか」と、他の子と比較して焦ってしまったり不安に思う日もあるでしょう。
成長速度は犬にもそれぞれ個体差がありますし、 最初から完璧な犬はこの世にいません。
共に時間を過ごしていくうちに、お互いにとってかけがえのない完璧なパートナーになるのです。
自身の愛犬と向き合い、犬の目線で考えて焦らずにゆったりとした気持ちでトレーニングをするようにしましょう。
私を信頼してください。
そうすれば、私もいつでもあなたを信頼するでしょう。
お互いを大事に思う気持ちは育んでいくもので、最初から与えられるものではありません。
犬の飼い主に対する忠誠心は本当に素晴らしいです。
大事に思って接していたら、その分犬も私たちを大事に思ってくれます。
私を長い時間怒ったり、閉じ込めたりしないでください。
私にはどうしてそんなことをされているのか、理解することができません。
私にわかることはただ一つ、あなたに拒絶されたということだけです。
あなたには仕事もあって、楽しみもあり、友達もいるでしょう。
でも、私にはあなただけなのです。
近年、犬のトレーニングでは褒めるしつけが効果的で、罰を与えるしつけは効果的ではないといわれています。
その理由としては、的確なタイミングで罰を与えることが非常に難しいということがあります。
望ましくない行動をした場合、その1秒以内に罰を与えないと犬は理解できないといわれています。
また、罰は毎回与えなくてはならず、できるときとできないときがあるようだと効果は出にくく、逆効果を起こしてしまうこともあるのです。
そのため叱るのではなく、 褒めるしつけで何が望ましい行動なのかを教えていく方が実は簡単 なのです。
犬にとって、よくわからないけどプリプリ怒ってる嫌な人にならないように褒めるしつけを実践しましょう。
最後の言葉は多くの方に刺さるのではないでしょうか。
犬の生活に選択肢は多くありませんし、完全な自由はありません。
「犬は毎日のんびりしてていいよな〜」と思うこともあるかもしれませんが、彼らは食べるものすら自分で選ぶ自由はないのです。
犬にも充実した人生(犬生)を送らせてあげるサポートをしましょう。
"責任"と重く受け止めるのではなく、飼い主さん自身も犬との生活を工夫して楽しむことが犬の幸せに繋がります。
特別なことをしなくても日々のお散歩だって楽しめます。
散歩中にスマホを見るのではなく、愛犬と一緒に季節の移り変わりなどを楽しむようにしましょう。
私に話しかけてください。
あなたの言葉を完璧に理解することはできないけれど、あなたの声や、声のトーンであなたのことを理解することができます。
私のことは、シッポを見てもらえれば何でもわかると思います。
犬はとても感情豊かな動物 です。
お互いの言葉を理解することができなくても、犬のシッポの動き、顔の表情、鳴き声などからも多くの気持ちを理解することができます。
同様に、犬たちも私たちの声や仕草で理解してくれるのです。
たくさん愛犬に話しかけて、より絆を深めましょう。
私はあなたがどのように接してくれたかを一生忘れません。
もし辛い扱いを受けたとしたら、その事は私の一生に大きな影響を及ぼすかもしれません。
良いことも悪いことも、どのように接してくれたかを犬はきちんと覚えています。
常に思いやりのある態度で接するようにしましょう。
私を殴らないでください。
私はあなたを殴り返すことはできません。
でも、ひっかいたり噛んだりすることはできます。
そんなことを、私はあなたに決してしたくありません。
犬が人間を噛んでしまうとき、自分の強さを誇示するために噛んでいるようなことはあまり無く、ほとんどの理由は恐怖心や防御反応からです。
体罰を行ってもいい効果を生むことはありません。
犬の歯は鋭く、顎の力も強いので、体格によっては 人間の方が危険にさらされる可能性がある ことを忘れないようにしましょう。
大抵の場合、犬には反撃する力があってもそれを選択することはなく、 じっと耐えることがほとんど でです。
何か犬の行動で困ってしまう場合は、体罰ではない方法でトレーニングをすることがおすすめです。
専門家(ドッグトレーナーや行動診察をする獣医師など)に相談することも選択肢の一つです。
私がいうことを聞かないと叱る前に、何か思い当たる原因がないか考えてみてください。
もしかしたら、適切なごはんを食べていないかもしれないし、長時間強い日光のもとにいて体調を崩してるかもしれません。
あるいは、私の体が歳を重ねて弱っているのかもしれません。
そのような状況で私は疲れ切っていて、うまく動くことができないのかもしれません。
犬の一生は人間よりも短いため、まだまだ赤ちゃんのように思っていた愛犬も気付けば老犬になっています。
犬も歳を重ねれば白髪が出てきたり、耳も遠くなり、動きもにぶくなっていきます。
日頃から、よく観察してあげて老化のサインが出てきたらサポートをしてあげるようにしましょう。
また、いつもと少し様子が違う場合は、体調を崩してる可能性もあります。
言葉でのコミュニケーションが取れない分 よく観察して、早めに気付いてあげること が肝心です。
私が老犬になっても気にかけてください。
あなたと同様に私も少しずつ老いていきます。
より多くの愛情やサポートが必要になってくるかもしれません。
歳を重ねてくると、自分の体が思うように動かなくなったり、目が見にくくなったり耳が遠くなったりすることで、不安感が強くなってしまう犬もいます。
老犬は子犬と同様に繊細なケアが必要になってくるので、 安心して過ごせるように環境を整えてあげましょう。
困難は一緒に乗り越えていきましょう。
どうか最期の旅立ちの時、「辛くて見ていられない」とか「私がいないところで逝かせてあげて」なんて言わないでください。
あなたがただ側にいてくれるだけで、私はどんなことでもたやすく乗り越えられるのです。
どうか覚えていて。
私はあなたが何をしてくれたかに関わらず、いつでもあなたのことを愛しているということを。
愛犬との別れはいつか必ずやってきます。
それは、人間にとっても犬にとっても耐え難いものです。
大好きだからこそ、死に向かい合うのはとても辛いことです。
今まで幸せな時間をくれた愛犬を、感謝の気持ちで送り出してあげましょう。
「あの子に何もしてあげられなかった」「もっと出来ることがあったのに」と、ご自分を責めてしまう飼い主さんも多くいらっしゃいます。
そのように感じることは、その子を心底愛していたという何よりの証拠です。
その深い愛情は必ず愛犬に伝わっており、きっとその子はあなたの家族として幸せな生涯を過ごしたのだと思います。
犬の十戒をもとにした作品はたくさんあります。
犬とのより良い暮らしについて改めて考えてみるきっかけにもなるでしょう。
ぜひ一度手にとって見てはいかがでしょうか。
子供でも読みやすい、優しい絵柄とひらがなで綴られた絵本。
動物に関心があるお子さんも多いと思うので、この絵本で子供と一緒に犬を飼うということを考えてみましょう。
こちらは「犬と私の10の約束」というタイトルでヒットした映画の原作です。
本も映画もまだ見ていないという方は、ぜひチェックしてみてください。
2010年に、OROKA(オロカ)という山形国際映画祭アニメ・CG部門最優秀賞を受賞した映画の主題歌です。
「犬の十戒〜ママ、愛しています〜」という曲で、伊吹唯さんという方が歌っています。
ママと語りかけるその優しい歌声や歌詞の内容に思わず涙してしまいます。
Youtubeでこの映画のショートアニメーションや歌も聞くことができます。
犬の十戒には、強い犬の十戒や、猫の十戒、捨て犬(猫)の十戒など様々なバージョンがインターネット上で発表されています。
読んでいておもわず微笑んでしまうようなものや、涙ぐんでしまうものまであります。
いずれも、動物たちの目線から人間に対してのお願いという形をとりながら、動物と人間の望ましい関係について語っています。
視点を変え動物の立場に立って考えることで、犬にとっても人にとってもより良い生活を送るヒントになるでしょう。
すでに犬を飼育している方は、ご自分の愛犬と向き合って我が家オリジナルの10の約束を作ってみるのも良いですね。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2020/11/19
公開日 : 2020/11/19