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アダンソンハエトリは、クモ目ハエトリグモ科オビジロハエトリグモ属に属するハエトリグモの一種です。
日本のほか世界中にも多く分布しており、日本の人家でもよく姿を見かけます。
体長は5~9㎜と1㎝にも満たない小さなクモですが、雄は黒い体に白い模様が入っているためよく目立ち、家の壁についていると目に入りやすいクモです。
ちなみに「アダンソン」という名前は土地名ではなく、アダンソンハエトリを発見したフランスの博物学者・ミシェル・アダンソンから取られたもの。
ハエトリグモは人家で見かけやすく、またよく見ると可愛らしい外見から好きという人も一定数いるため、ハエトリグモだけをまとめた本も発売されています。
学名:Hasarius adansoni
分類:クモ綱 クモ目 ハエトリグモ科 オビジロハエトリグモ属
分布:本州以南~南西諸島、ヨーロッパなど
大きさ:雄5~7mm、雌6~9mmほど
ハエトリグモの中でも家の中で見かけやすく、親しみ深いクモであるアダンソンハエトリ。
どのような特徴を持っているのでしょうか。
クモは人にとって害を成す虫である害虫たちを食べてくれる益虫ですが、アダンソンハエトリもまた、害虫を捕えて主食とする虫です。
アダンソンハエトリの主な食べ物は、コバエ、ゴキブリの幼体、蚊やダニなど人の家の中に生息しがちな害虫たち。
そのため、これらの害虫たちを食べてくれるアダンソンハエトリは、人と共存し、良い影響を与えてくれる益虫なのです。
虫を捕まえて食べると言ってもその顎で人を噛んだり、また毒もないため、家の中で見かけたとしても駆除する必要はありません。
クモと言えば巣を張り、そこに捕まった虫を捉えて食べるという印象が強いもの。
しかし、アダンソンハエトリは捕獲用の巣を作ることはありません。
彼らはその脚で歩き回り、直接獲物をハントする徘徊性のクモなのです。
餌がやってくるのをじっと待つだけでなく、自分で狩りにいってくれるクモのため、家の中に害虫がいれば捕えてくれる可能性が高くなります。
さらに、人の顔に引っかかると不快な気持ちになることの多い巣も張らないため、共存するにはとてもありがたいクモなのです。
クモは一般的に8つの目を持つ、とても目の数が多い生き物です。
中には目が0個や4つというクモもいますが、アダンソンハエトリも基本的なクモと同じく8つの目を持ちます。
注目したいのはその大きさ。
アダンソンハエトリの姿を見れば良くわかりますが、正面に並ぶ4つの目がとても大きく、またその大きさに違わず視力が良いのが特徴です。
アダンソンハエトリを見つめるとその大きな目で物の形を捉えようとするため、アダンソンハエトリの方もこちらをじっと見つめてきたり、体の向きを変えて振り返りこちらを見る様子が観察できます。
この発達した目でアダンソンハエトリは獲物の姿を捉えるのです。
外でクモの巣を張っているクモの中には脚が細く長い部類もいるため、クモというと脚が長いと思っている人も多いのではないでしょうか。
アダンソンハエトリはクモではありますが、実は脚があまり長くありません。
しかし、その代わりに驚異的なジャンプ力を誇り、英名でハエトリグモははジャンピングスパイダーとも呼ばれているのです。
そのジャンプ力は狩りの時に活用され、獲物を見つけるとそっと距離を詰め、一気に飛び跳ねて捕えます。
助走もなく一気にとびかかるため、獲物は逃げる暇もなくアダンソンハエトリに捕まってしまうというわけです。
虫の中には雄と雌で体の大きさが違ったり、特徴に違いがあったりする種類もいます。
アダンソンハエトリもその一種で、雄と雌ではかなり外見が違うのです。
雄は基本的に体の色が黒く、白い斑紋が頭胸部と腹部にあるためぱっと見たときに良く目立ちます。
また、腹部が頭胸部より小さめでちょこんとした印象なのが特徴的です。
雌は全体的に茶色っぽい色合いをしており、雄のような白い斑紋もありますが身体全体の色も相まって目立ちません。
そのため、雄と雌を並べてみると、違う種類のハエトリグモに見えるときもあります。
虫でありながら可愛らしく、面白い特徴を持つアダンソンハエトリ。
特徴だけではなく、アダンソンハエトリの生態も詳しく紹介していきます。
アダンソンハエトリは日本の本州や南西諸島に分布しており、ヨーロッパなどの海外にも広くいます。
ハエトリグモの中でもチャスジハエトリと並んで人間の住む家屋内で普通に見られるクモであり、一軒家以外にも都会のアパートやマンションにも生息しているのです。
壁に小さな黒い物体が居ると思ったらアダンソンハエトリだった…という経験がある人もいるのではないでしょうか。
また、家の中でPCを扱っているとそばにいたハエトリグモが、液晶画面の中で動くマウスポインタを獲物と間違えてとびかかった、なんていうエピソードもあります。
動物の求愛行動には様々なものがありますが、アダンソンハエトリは視力がいいため、目で良く見えるような求愛行動をします。
その手段が求愛ダンス。
アダンソンハエトリを含めたハエトリグモの雄は、雌の前でダンスのように身体を動かし求愛をします。
アダンソンハエトリの場合は、第一節をまるで抱きしめるときのように大きく広げ、雌の周りでゆらゆらと動きながら近づいていくのが特徴的です。
ちなみに、カマキリは交尾後に雌が雄を食べてしまうことで有名ですが、アダンソンハエトリも交尾が終わると雌に食べられてしまうことがあるため、終わると雄はサッと逃げ出してしまいます。
アダンソンハエトリの寿命は1年ほどだと言われています。
ハエトリグモの中には3年ほどの寿命を持つものもいますが、どちらにしてもあまり長くはありません。
外にはアダンソンハエトリにとって外敵となるものも多いため、人の家の中のような室内の方が長生きしやすいのかもしれません。
アダンソンハエトリの魅力に、思わず飼いたいと思ってしまう人もいるのではないでしょうか。
気になるアダンソンハエトリの飼育方法について紹介していきます。
そもそもアダンソンハエトリは飼えるのかという点についてですが、クモは益虫として害虫を食べてくれる生き物です。
家の中にいるアダンソンハエトリも自由に動き回り、屋内にいる害虫を食べてくれます。
そのため、飼育容器に入れて飼育するとなると、害虫を食べてくれるという益虫としての役目は失われてしまいます。
しかし、ハエトリグモを飼っているという愛好家もいるため、アダンソンハエトリを飼うこと自体は可能です。
アダンソンハエトリは、ハエトリグモの中では比較的飼育が簡単な種類と言われているため、「アダンソンハエトリの姿や生態を近くで観察してみたい!」「可愛いハエトリグモの姿をもっと近くで見ていたい!」という人は飼育に挑戦してみるのも良いでしょう。
アダンソンハエトリを飼うとなると必要となってくるのが飼育容器です。
アダンソンハエトリは広い部屋の中を歩き回る生き物ですが、飼育する際は餌を捕まえやすくするために小さめの容器で飼育するのがおすすめです。
100均で売られているようなタッパーや小さめのプラケース、フィルムケースや350mlのペットボトルなどで飼育することができます。
中にいるアダンソンハエトリの様子が分かるように、透明なものがおすすめです。
また、アダンソンハエトリは乾燥に弱いため、ティッシュやコットンを湿らせてケースに入れておきましょう。
前述したようにアダンソンハエトリは、生きた虫を食べる生き物です。
そのため、飼育するとなると生餌が必要になります。
アダンソンハエトリは動くものに興味を示す習性があるため、飛んだり跳ねたりするショウジョウバエや蚊、チョウバエなどを与えるのがおすすめです。
捕獲方法はショウジョウバエの場合、夏場などは腐りかけた果実など匂いの強い食べ物を半分に切ったペットボトルに入れておびき寄せる方法が有効的。
捕まえるのが難しいという場合は、ショウジョウバエ自体を飼育するという方法もあります。
また、エキゾチックアニマルの餌として売られているフタホシコオロギやヨーロッパイエコオロギ、レッドローチなどの小さなサイズを与えるのもおすすめです。
こちらは爬虫類専門のペットショップや通信販売で売られています。
アダンソンハエトリは雄と雄を一緒にするとどちらが強いかを示すため威嚇しあったり、雄と雌の場合は交尾後に雌が雄を食べてしまったりと、共食いをする虫です。
そのため、飼育するときは共食いを防ぐために、必ず1つの飼育容器に1匹のアダンソンハエトリを飼うようにしましょう。
また、飼育には湿気が必要ですがアダンソンハエトリはとても小さな生き物です。
水を直接飼育容器内に入れると溺れて死んでしまうこともあるので、必ずティッシュやスポンジに含ませてから入れるようにしましょう。
アダンソンハエトリは親しみやすいクモのため、懐いたら可愛いと思う人もいるでしょう。
実際、手に乗ったり、人に向かって跳んできたりするアダンソンハエトリもいますが、基本的に虫は人に懐かない生き物のため、懐いているのではなく動いているものに反応して近づいてきたというのが正しいと言えます。
しかし、例え懐かなくても可愛らしいアダンソンハエトリが近づいてきたり興味深い動きをしている様子を観察してみたりするだけでも、楽しい気持ちになれるのではないでしょうか。
ハエトリグモにはアダンソンハエトリの他にも多くの種類がおり、その種類はクモ類で最大の約5000種とも言われています。
その中でもアダンソンハエトリの近縁種として、よく見られる代表的なハエトリグモの種類をご紹介します。
チャスジハエトリは、アダンソンハエトリと同じく、屋内で見られやすいハエトリグモの一種です。
ハエトリグモの中では大柄な種類にあたり、雄の体長は10~12㎜、雌は7~11㎜と1㎝を超えるものもいます。
アダンソンハエトリと同じく、雄と雌で見た目に大きな違いがあり、雌は褐色の体にまだら模様があるのに比べ、雄は黒い体の真ん中に白い線が一本入っているという外見をしています。
日本では本州、四国、九州と幅広く分布し、家の中以外でも公共施設や電話ボックスなどでも発見することのできるハエトリグモです。
また、自分の体長から体長の2倍ほどの獲物を捕まえることもあり、アダンソンハエトリと同じく狩りに積極的なクモと言えます。
学名:Plexippus paykulli
分類:クモ綱 クモ目 ハエトリグモ科 スジハエトリグモ属
分布:本州、四国、九州、南西諸島、海外の熱帯地域など
大きさ:雄7~11mm、雌10~12mmほど
シラヒゲハエトリは体に白い毛が生えており、触肢のそれがよく目立つハエトリグモの一種です。
全体的に平たい身体をしており、雄よりも雌の方が体が一回り小さいのが特徴。
体自体は黒~茶色のような色をしていますが、体に生える細かい毛によって白っぽいクモと思われることも多いです。
家屋で見かけられることが多いですが、アダンソンハエトリやチャスジハエトリのように屋内ではなく、野外の壁などで主に発見されます。
また、袋状の巣を作った周りと縄張りとし、その周辺を徘徊して狩りを行うことが多いハエトリグモです。
学名:Menemerus brachygnathus
分類:クモ綱 クモ目 ハエトリグモ科 シラヒゲハエトリグモ属
分布:本州、南西諸島、東南アジア、インドなど
大きさ:雄 6~9mm、雌 8~10mm
マミジロハエトリは頭部の前方に白い毛が密集して生えているのが特徴的で、まるで白い眉毛やひげのように見えるため、ユニークな印象を与えるハエトリグモです。
雄は黒っぽく光沢のある背中をしており、雌は全体的に灰色の体にいくつか横縞の模様があるように見える外見をしています。
屋内ではなく野外で多く見られ、山地の木の上や植物の上に乗っていたり、また街中に生える緑の中でも発見されることがあります。
学名:Evarcha albaria
分類:クモ綱 クモ目 クモ亜目 クモ下目 ハエトリグモ科 マミジロハエトリグモ属
分布:北海道、本州、九州など日本全国、韓国、中国、ロシアなど
大きさ:雄 6~7mm、雌 7~8mm
アオオビハエトリは、ハエトリグモの中でも美しい外見が特徴的な種類です。
名前の通り腹部に青緑色の帯模様があり、角度によっては光沢のある美しいメタリックグリーンカラーに光ります。
普段は灰色ベースの身体も光の当たり具合や時期によって青緑色を帯びるため、きらきらと派手なハエトリグモとしても有名です。
また、アリを好んで捕獲するため、アリの巣のある平地やアリがよく歩いている庭園などに現れることが多いです。
常に第一脚を上げて歩いているという珍しい歩き方をしているため、まるで角があるようにも見えるのが特徴的ですね。
学名:Siler vittatus
分類:クモ綱 クモ目 ハエトリグモ科 オビハエトリグモ属
分布:本州から九州、南西諸島、中国、韓国など
大きさ:雄 4~6mm、雌 5~7mm
アリグモは、アリにそっくりなハエトリグモの一種です。
雄の場合は顎が発達しているため、よく見るとアリではないことが分かりますが、雌は顎が発達しないためよりアリらしく見えます。
第一脚をあげて歩いているのも、アリの触覚に似せている、擬態しているものと考えられているのです。
アダンソンハエトリと同じく、ショウジョウバエなどを食べますが、野外に生えている葉の裏などに糸で巣を作っていることもあるので、葉っぱを裏返すと見つかることもあるかもしれません。
学名:Myrmarachne
分類:クモ綱 クモ目 クモ亜目 ハエトリグモ科 アリグモ属
分布:北海道、本州、四国、九州、南西諸島など
大きさ:雄 5~6㎜、雌 7~8㎜
虫やクモというと苦手、気持ち悪いという印象がある人も多いかもしれません。
しかし、アダンソンハエトリやハエトリグモの仲間たちは、屋内に居ても人に危害を加えることなく、逆に人を不快にさせる害虫を食べてくれる益虫なのです。
動きを観察してみたり、姿かたちをよく見てみると、アダンソンハエトリの虫ならではの魅力や可愛さに気付くこともあるかもしれません。
室内でも野外でもアダンソンハエトリを見つけたら、是非その生態に注目して大切に扱ってあげてください。
公開日 : 2019/12/15