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白点病は魚の体表やヒレに白い点が発生し、いずれ体表全体が白く覆われてしまう病気です。
魚の病気の中ではよく見られるものの1つであり、飼育されている魚だけではなく、野生の魚にも発生することがあります。
白点病は非常に感染力が強く、1匹発症するとあっという間に水槽全体に広がってしまい、魚が全滅することも少なくありません。
まずは白点病に感染してしまった場合、魚たちにどんな症状が現れるのかをご紹介します。
魚の体表に寄生した白点病の原因である「イクチオフティリス」和名:ウオノカイセンチュウは、表皮と真皮の間に潜り込み、魚の組織や体液を食べてしまいます。
そして、イクチオフティリスに寄生されてしまった魚は体がかゆくなるため、様々なものに体をこすりつけます。
体に白い点が見られなくても、何度も砂利や流木などに体をこすりつけている魚がいたら、白点病の可能性があると考えた方が良いでしょう。
この段階で対処ができれば完治させられる可能性が高いため、「あれ?」と思ったらすぐに治療を開始してください。
イクチオフティリスに寄生された魚は体力が低下し、同時に食欲が低下します。
いつも食欲が旺盛な個体がエサを食べない時は、何かの病気である可能性が高いと思われます。
白点病にかかった魚に見られる、他の症状が出ていないかよく観察してください。
食欲不振が続くと魚の体力がどんどん落ちてしまい、病気に負けてしまうかもしれません。
食欲の低下に気付いたらなるべく早急に原因を推測し、治療を開始してください。
エラにイクチオフティリスが寄生すると、呼吸がしづらくなるため目に見えて呼吸が荒くなります。
特にエラに寄生されると呼吸困難を引き起こし、致死率が高まるので注意が必要です。
このような行動が見られたら、イクチオフティリスに寄生されて体力が落ちている可能性があります。
魚がいつもと違う行動をしていたら、白点病や他の病気のサインがないかよく観察しましょう。
白点病は繊毛虫(センモウチュウ・ゾウリムシやツリガネムシの仲間)の1種、イクチオフティリス(別名:ウオノカイセンチュウ、ハクテンチュウ)(学名:Ichthyophthirius multifiliis)という寄生虫が魚に寄生することが原因で発症します。
イクチオフティリスは魚に寄生して体液や細胞などを食べて成長し、成虫になると魚の体を離れ、シストとよばれる卵のようなものを作ります。
シストは水槽の壁や砂利などにくっついて細胞分裂を繰り返し、24時間内に大量の仔虫を放出します。
そして、仔虫は再度魚に寄生し、成長してはシストを作る…といったサイクルでどんどん増えていきます。
白点病があっという間に進行するのは、イクチオフティリスの増殖速度が非常に速いことによります。
残念ながら、現在のところ魚に寄生しているイクチオフティリスの成虫を駆除する薬剤はありません。
効果的とされている薬剤や対策方法は、全てイクチオフティリスのシストや仔虫を駆除し増殖を防ぐものです。
1度白点病が発生すると水槽全体に大きなダメージを与えてしまうため、白点病の原因を知って可能な限り原因を排除していくことが大切です。
白点病が発生する原因として一番多いのがこのパターンです。
ショップで購入した新しい魚にイクチオフティリスが寄生していて、知らぬ間に水槽に広がってしまうことがあります。
魚だけではなく、水草が感染源になることがあるため注意が必要です。
急激な水温の変化は、想像以上に魚の体力を奪います。
また、イクチオフティリスは低温(3-25度)になると活発になるため、急激に水温が下がると白点病のリスクが高くなってしまいます。
実は水槽の中にイクチオフティリスがいても、魚の体力や免疫力があると白点病を発症しないことがあります。
ただし、水質が悪化すると魚の体力や免疫力が落ちてしまい、微妙なバランスで成り立っていた水槽の環境が崩れてしまって突然イクチオフティリスが牙をむくことがあります。
実際に魚が白点病にかかってしまった場合は、どのように治療すれば良いのでしょうか。
ここでは、現在効果的だと言われている白点病の治療方法をご紹介します。
メチレンブルー(ニューグリーンF、グリーンFリキッドなど)、マラカイトグリーン(アグテンなど)の水が青色になる動物用の医薬品で治療する方法です。
治療薬を使用する際は注意書きをよく読み、必ず使用量や使用頻度を守ってください。
適切に使用しないと、せっかく治療薬を使用しても十分な効果を得ることができません。
多くの治療薬は水槽の水を3分の1〜2分の1程度交換し、水量に合わせた量を投薬して様子を見ます。
治療薬を吸着してしまうため、治療中はフィルターを止めて吸着効果のある砂利なども取り除きます。
ハクテンチュウの生活サイクルを考えると、治療には最低でも1週間程かかると考えておきましょう。
なお、治療中に治療薬の色が薄くなり、魚がはっきりと見えるほどまで退色したら薬効がなくなったと考えます。
その状態になってもまだ病気が治らない場合は、再度水を取り替え治療薬を投薬してください。
また、水草のほとんどは薬品に弱いため、枯らしたくない場合はバケツなどに隔離した方が良いでしょう。
ただし、水草にイクチオフティリスの仔虫やシストが付いている可能性があるため、絶対に他の魚の水槽には入れないでください。
魚の白点病が完治したら水草を薄めた治療薬で消毒し、水で良く洗ってから水槽に戻しましょう。
イクチオフティリスは水温が低い(25度以下)と繁殖しやすいとされています。
ある程度温度を上げても差し支えない魚の場合は、水温を28~31℃程度まで上げると良いでしょう。
金魚のように高温に弱い魚の場合は、あまり無理をしてはいけません。
水温を上げることによってイクチオフティリスの活動や増殖を抑え、同時に魚の新陳代謝を活発にすることで効率的に駆除できます。
唐辛子(鷹の爪)を使った民間療法です。
方法としては、水槽の水10リットルあたりに1本程度の鷹の爪を輪切りにして水槽に浮かべるだけです。
唐辛子は輪切りにすると種が出てしまうので、排水口や生ごみ用のネット、お茶パックなどに入れて使うと良いでしょう。
唐辛子に含まれるカプサイシンには殺菌効果があるため、イクチオフティリスの仔虫や成熟虫を殺してくれると言われています。
水草を傷めずに治療ができること、鷹の爪自体が手軽に入手できることから、応急処置的にも使える方法です。
ただし、あくまで民間療法であることから、過信しない方が良いと言えます。
なお、唐辛子にプラスして塩浴をする方もいるようです。
塩浴をする際は水槽の水量を計算し、塩分濃度が0.5%になるように塩の量を正確に測りましょう。
塩は粗塩、熱帯魚用の塩どちらを使っても構いませんが、水槽に少しずつ入れてください。
塩浴は魚の体力の減少を防ぎ、病気の治りを早めてくれます。
ただ、塩に弱い水草も多いため、水槽に水草を入れている方は、塩浴を控えるか別のバケツなどに移しておいた方が良いでしょう。
もし白点病が原因で死んでしまった、あるいは死んでしまったと思われる魚がいたらすぐに水槽から取り出しましょう。
死亡した魚の体内はイクチオフティリスの巣窟になってしまっているため、他の魚の治療のためにもなるべく早く取り出して埋葬してあげてください。
いくつもの治療方法があるとしても、そもそも魚たちが白点病にかからない方が良いですよね。
ここからは白点病を予防するためには、どのようなことができるかをご紹介します。
すでに出来上がっている水槽に新しい魚や水草を入れる場合は、病気ややっかいな生き物を持ち込まないことが大切です。
新しい生き物を導入する場合は面倒でもトリートメント用の水槽を立ち上げ、トリートメントを行ってから水槽に入れるようにしましょう。
水槽には必ず水温計を設置し、最低限お世話をするたびに水温を確認する癖をつけましょう。
そして、水温が下がる時期はヒーターを設置し、水温が上がる時期はエアコンや水槽用ファンなどを使って急激な水温の変化を避けるように心がけてください。
冬場の必須アイテムである水槽用ヒーターは消耗品であり、突然壊れてしまうことも少なくありません。
夜間にヒーターが破損して焦らないように、可能であれば1つ換えのヒーターを用意しておくと安心です。
面倒でも定期的に水槽の水を換え、キレイな水を保つようにしましょう。
水質の悪化は白点病だけではなく、さまざまな病気を引き起こす原因となります。
水換えの際には、フィルターの掃除も忘れずに行ってくださいね。
今回は熱帯魚好きの方を悩ませるやっかいな病気、白点病について解説してきました。
白点病は治療しなければ100%死に至る恐ろしい病気ですが、早期発見・早期治療ができれば完治できる可能性がある病気でもあります。
日常的に魚たちや水槽内の様子をチェックする習慣を付け、病気にさせない環境作りを心がけてくださいね。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/12/07
公開日 : 2019/06/24