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さつまいもには猫にとって毒性がないため、食べても問題ありません。
秋から冬にかけて、さつまいもが食卓に並ぶことも増えてきます。
季節の食材は栄養がたくさん含まれているので、「猫にも一口あげてみようかな?」と思う人も多いはず。
しかし、さつまいもは猫の喜ぶ動物性脂肪やタンパク質が多く含まれているわけではありません。
人が食べているので、猫も気になって食べる、あるいは食感が楽しくて食べるというケースが多いようです。
どの猫も喜んで食べるというわけではなく、さつまいもが好きになる猫と、さつまいもに興味が出ない猫に分かれるでしょう。
猫の食性は、離乳期の母猫の与えていた食材に大きく左右されることが分かっています。
人に飼育されている猫は、離乳期に与えていたキャットフードの食材がその猫の好みを決めています。
さつまいもが大好きという猫は、子猫のときに芋類の入ったフードを食べていたのかもしれないですね。
秋冬に多く出回るさつまいもですが、猫の体に良い成分が多く含まれています。
その代表例がさつまいもの以下の成分です。
基本的に猫にとって必須な栄養素であり、免疫力アップなどの効果が期待できます。
必要な栄養素は総合栄養食のキャットフードにはバランス良く含まれているので、あくまでもさつまいもは補食。
体に良いおやつという位置付けであり、食べ過ぎれば健康を害します。
あげるのであれば毎日ではなく、週に1~3回程度、一回量は小指の先ほどの量にしておきましょう。
ビタミンB6は酵素の補酵素として働きます。
ビタミンB6を必要とする酵素の数は100種類にもなります。
中でもアミノ酸の代謝でも大切な役割があり、猫にとっても大切な栄養素です。
猫に必要なビタミンB6の量は以下の通りです。
0.625mg/1000kcal
ビタミンB6が足りないと、神経症状、軽度の貧血、筋肉の減少、成長不良になります。
逆に、ビタミンB6は水様性ビタミンなので、多過ぎる分は尿中に出ていくことから、摂り過ぎて何か症状が出ることはほとんどありません。
猫はビタミンCを食餌から摂らなくても体内で合成できるので、厳密に言えばビタミンは必要ありません。
そのため、人のようにビタミンCの摂取するべき量というものは無いのですが、食べれば効果は期待できます。
ビタミンCには以下のように沢山の働きがあります。
さつまいもは他の根菜にくらべてビタミンCを多く含んでいるので、寒さによって免疫力が下がる時期にはもってこいの食材と言えるでしょう。
ビタミンEは猫にとっても必須ビタミンであり、食べ物から摂取する必要がある重要な栄養素です。
脂溶性ビタミンと言われるもので、体内に蓄積します。
しかし、少量のさつまいもに含まれる量では過剰ビタミンEとなることはありません。
ビタミンEの働きも抗酸化作用です。
体内で活性酵素や過酸化物が作られると、それが細胞の膜を傷つけます。
それを防ぐのがビタミンEです。
もし猫にビタミンEが足りなくなると、以下の場所に影響が出ます。
具体的な問題では、下記が挙げられます。
一方で、猫のビタミンE過剰は一般的に毒性は低いとされています。
さつまいもにはβカロテンも含まれています。
βカロテンはビタミンAとなり、その後にレチノールになります。
猫はビタミンAをレチノールに変換させる酵素が少ないので、犬よりも多く必要です。
βカロテンがビタミンAに変換されると、以下のはたらきを担います。
人間だけでなく猫にとっても大切な栄養素であることがわかりますね。
また、ビタミンAは脂溶性ビタミンなので体内に蓄積しますが、βカロテンは体内のビタミンAの過不足に対応して変換されるので、問題になりずらいこともメリットです。
さつまいもには炭水化物が多く含まれていますが、猫は肉食なので炭水化物の消化吸収が得意ではありません。
炭水化物は主に糖質と繊維質でできています。
動物種として猫はタンパク質と脂肪分を多く必要としていて、糖質と繊維質はあまり必要ではない生き物です。
そのため、猫は甘みを感じません。
人は唾液の中にアミラーゼが含まれているので、お米など炭水化物を噛むと、でんぷんからマルトースを作り出し甘みを感じます。
猫はアミラーゼも無ければ、甘みを感じるレセプターも無いとされています。
つまり、猫は炭水化物に対して魅力を感じない体の作りなのです。
そんな猫に炭水化物をたくさん食べさせるのは、糖尿病や消化不良のリスクが高くなるため推奨しません。
炭水化物に含まれる食物繊維は、腸内細菌のバランスを整えたり、便秘予防の効果があります。
この点では、猫にとってもさつまいもは良いと言えるので、ごく少量あげるのが良いでしょう。
猫はスイートポテトであれば喜んで食べます。
それはさつまいもが好きなわけでは無く、大量のバターが入っているからです。
生クリームが入っていれば、それも猫にとっては美味しい要素になります。
しかし、人間用に作られたスイートポテトは猫にとっては糖分が多過ぎるのであげてはいけません。
バターも生クリームも多ければ猫は下痢になってしまいます。
猫用に作られたスイートポテトであれば、愛猫に試してみても良いでしょう。
手作りで、さつまいもをふかしたものをペーストにしただけであれば、猫に悪い成分は入っていません。
中には当院のお客様で、お薬を包むのにこのペーストを利用している方もいました。
ほんの少量であれば問題ないでしょう。
腎臓病に影響するのは、タンパク質、塩分、カルシウム、リン、カリウムです。
このうち、さつまいもに多く含まれるのはカルシウムとカリウムです。
腎臓病が初期のものであれば、さつまいもの成分を食べても大きな影響はないでしょう。
失われがちなカリウムが補給される点はメリットです。
便秘がちになることも多い猫の腎臓病なので、整腸作用を期待してさつまいもをあげている人もいます。
腎臓病が末期的なステージでは、猫に悪影響が出ることもあります。
必ず担当している獣医師に確認してから、猫にさつまいもを与えるようにしてください。
膀胱炎の原因によります。
尿中に結晶が析出するタイプの膀胱炎では、食餌制限が大切なので、さつまいもを与えない方が良いでしょう。
猫がストレス性の膀胱炎の場合には、さつまいもを与えても大丈夫です。
むしろ猫がさつまいもが好きなのであれば、コミュニケーションの一環として役立ちます。
猫には少ない細菌性膀胱炎でも、さつまいもは影響しないのであげても大丈夫です。
免疫力が低下している可能性もあるので、ビタミン類の多いさつまいもはメリットがあるかもしれません。
少量であれば、健康な猫はさつまいもを食べても大丈夫です。
さつまいもが好きな猫も、嫌いな猫もいます。
しかし、猫は炭水化物の消化吸収が得意ではないので、多く与えるのは厳禁です。
さつまいもには、猫に良いビタミン類も多く含まれています。
腎臓病や膀胱炎の猫でも、さつまいもを食べて大丈夫なケースもあります。
持病で食餌療法が実施されている場合には、さつまいもを食べても良いか、かかりつけの獣医師に確認するようにしてください。
だいたいの猫ではさつまいもを与えることで問題が起きることはありません。
秋の味覚であるさつまいもを、ぜひ猫と一緒に楽しみましょう。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/09/14
公開日 : 2022/09/14